本のエッセンス|はじめに:人生100年時代の「むせ」予防&対策 診療室での“気づき”で患者を守ろう!

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行にあたって」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行にあたって」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、人生100年時代の「むせ」予防&対策 診療室での“気づき”で患者を守ろう!です。

ゼネラルデンタルカタログ

はじめに

 「むせ」、「窒息」、「脱水」、「低栄養」、「食べる楽しみの消失」、これらは、教科書に
載っている嚥下障害の5大症状です。なかでも「むせ」は、最初に記述されているように、最も重要な症状です。
 一方で、「むせ」は患者さんにいろいろな解釈をされることもあり、なんともぼんやりした症状であるともいえます。
 「むせることはありますか?」、これは患者診察の際によく尋ねる言葉です。すると、
「はい、よくむせるんです」などと返ってくることもあれば、「むせることはありません。でも、よく食事中に咳込みます」などと返ってくることがあります。
 これって、「むせ」ですよね?
 私たちが「むせ」とは誤嚥によって起こる重要な症状と思っていても、患者さんからすると「むせってなぁに?」ということも起こり得るのです。
 「むせ」とは、食べものや唾液が気管の中に入ると呼吸が困難になったり、肺炎を起こしてしまうリスクがあるために、勢いよく空気とともに吐き出そうとする現象のことです。ですので、むせが起こるような状況、すなわち誤嚥は、できるだけ避けなければなりません。一方で、もし誤嚥してしまった場合には、自分を守るために、しっかり「むせ」て気管から出す必要があります。私たちは、むせない工夫と、しっかりむせる工夫を知り、患者さんに伝えていかなければなりません。
 本書は、DHstyle2022年5月号特集およびDHstyle 連載(「飲み込みにくい」「むせる」はなぜ起こる? 中年期からのむせ/2022年7月号〜2023年6月号)をベースとして、より幅広く「むせ」についての理解が深められるように項目を追加し、再編しています。
 みなさんには、本書を手に取ることによって「むせ撲滅マスター」の道を歩みだしていただければと思います。いつまでも、おいしく、自分の口から食べる努力は、中年期から始まっているのです。

2023年9月
菊谷 武

CONTENTS

編集委員プロフィール

菊谷 武(きくたに たけし)

1988年 日本歯科大学 卒業
2001年 日本歯科大学附属病院 口腔介護・リハビリテーションセンター センター長
2005年 日本歯科大学附属病院 助(准)教授
2010年 日本歯科大学附属病院 教授
2010年 日本歯科大学大学院生命歯学研究科
臨床口腔機能学 教授
2012年 東京医科大学 兼任教授
2012年 日本歯科大学 口腔リハビリテーション 多摩クリニック 院長
現在に至る

日本老年歯科医学会 理事・評議員
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 理事・評議員
日本障害者歯科学会 評議員
日本口腔リハビリテーション学会 理事長

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田村文誉(たむら ふみよ)

1989年 昭和大学歯学部 卒業
1991年 昭和大学歯学部 口腔衛生学教室入局
2001年 米国アラバマ大学歯学部 補綴学・生体材料学教室留学(4月より1年間)
2004年 日本歯科大学 講師
2012年 日本歯科大学 口腔リハビリテーション科 科長
2013年 日本歯科大学 口腔リハビリテーション科 教授
2019年 日本障害者歯科学会 理事
2023年 日本歯科医学会連合 理事
現在に至る
博士(歯学)昭和大学
日本障害者歯科学会 専門医・認定医・指導医
日本老年歯科医学会 専門医・認定医・指導医・摂食機能療法専門歯科医師
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 認定士