待合室の絵本コンシェルジュ:DHstyle 2023年12月号

歯科衛生士向け月刊誌『DHstyle』より、歯科医院の待合室にぴったりの素敵な絵本をご紹介いたします。今回は、『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』です。

ゼネラルデンタルカタログ

おうさまがかえってくる100びょうまえ!

 診察を待つ時間は、「じっくり本を読むには短くて、テレビの視聴ばかりも飽きてくる」と感じることがありますね。今月は、そのようなときにおすすめの絵本『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』を紹介します。

 王様の部屋は綺麗で広いうえに、興味を惹く面白いものがたくさんあります。
 ある日、王様が外出したときのこと。家来たちは、鬼の居ぬ間に……とばかり、王様の部屋で羽目を外し、思う存分遊びました。王冠をかぶり、王様の杖を持ち、落書きをしたり、王様のベッドで昼寝をしたりと、やりたい放題。部屋は、あっという間に散らかってしまいました。
 家来たちが楽しく過ごしていたとき、なんと王様が予定より早く帰ってきてしまいました。部屋に着くまでに残された時間はわずか100秒! さあ、どうする家来たち?!
 お話はとてもシンプルで、王様の帰宅に気づいてからの、家来たちのてんやわんやが、100秒までのカウントアップで描かれています。読者は、秒数が増えるにつれて慌てふためく家来たちの様子に大笑いしつつ、ハラハラ・ドキドキの緊張感も味わえます。
 はたして、王様の部屋は時間内に元の姿に戻ったのでしょうか? いいえ、片づけたつもりの部屋はおかしなところだらけで、家来たちは異変に気づいた王様に叱られてしまいます。
 ただ、読者としては、家来たちに少し申し訳ない気がしてきます。それは、この絵本に、物語を読む以外の“隠れた楽しみ”があるからです。実は、表紙と裏表紙の近くに王様の部屋のビフォア・アフターが載っていて、間違い探しをして遊べるのです。こんな風に遊べるのは、間違いなく家来たちが羽目を外したおかげですからね。
 この絵本は、物語の展開よりも“家来たちの状況”を楽しむ絵本です。そのため、お話の途中でもストレスなく中断できますし、次の機会には間違い探しから読むことも可能です。
 時間に縛られず、柔軟な読み方ができる点で、待合室向きの絵本といえるでしょう。

作:柏原 佳代子
出版社:えほんの杜

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