Q&A 法律 電動キックボードの運転ルールはどのように変わった?|デンタルダイヤモンド 2023年11月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2023年11月号より「電動キックボードの運転ルールはどのように変わった?」についてです。

スタッフが電動キックボードで通勤したいと希望しています。道路交通法の改正によって、今年の7月から電動キックボード運転時のルールが変わったと耳にしました。具体的にどのように変わったのか教えてください。また、スタッフが通勤に使用する際の注意点も教えてください。 神奈川県・Y歯科医院

令和5年7月1日、道路交通法の一部を改正する法律のうち、特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード等)の交通方法等に関する規定が施行されました。
 これまで電動キックボードは、法律上、原動機付自転車(いわゆる原付バイク)の扱いでした。改正法では「特定小型原付」の新区分が設けられ、一部の電動キックボードはこの新区分に分類されることになりました。具体的には、電動で定格出力が0.6kw以下、長さ190㎝以下、幅60㎝以下、最高速度時速20㎞以下等の条件を満たすものが特定小型原付に分類されます。街中で見かけるシェアリングの電動キックボードは、基本的にこの特定小型原付に該当します。
 電動キックボードは、改正前は原付バイクの扱いでしたので、運転には運転免許とヘルメットの着用が必要でした。しかし、改正後は、運転免許が不要になり、ヘルメットの着用は任意(努力義務)となりました。
 また、運転可能な年齢は、改正前は運転免許に準じていましたが、改正後は16歳以上であれば運転可能となりました。
 走行可能場所は、改正前は車道のみでしたが、改正後は、車道に加えて標識がある場所では自転車レーンや路側帯も走行可能となりました。さらに、最高時速6㎞以下、最高速度表示灯の点滅等の条件を満たせば、歩道も走行可能になりました。基準に対応した電動キックボードは、車道走行・歩道走行とモードチェンジできます。
 もっとも、自賠責保険の加入やナンバープレートが必須であること、飲酒運転が禁止されていることなどは、改正前後で変わりません。
 スタッフが電動キックボードを通勤に使用することに関しては、就業規則等でルールを定めることが適切です。スタッフが通退勤中に事故を起こして他人に損害を与えた場合、使用者責任として、雇用主の先生または医療法人社団も被害者に対して連帯責任を負う可能性があります。そのため、端的に、電動キックボードによる通勤を禁止することも可能です。認める場合でも許可制とし、対人・対物賠償額無制限の任意保険の加入や保険証券の写しの提出等を条件にすることが妥当です。
 また、電動キックボードの使用の有無で雇用主が負担する通勤交通費が変わるようであればその旨、診療所における充電の可否、電動キックボードを使用した通退勤ルート、事故を起こした場合の責任負担、許可の取消事由等について規定することも有益です。
 なお、電動キックボードのなかには、定格出力やサイズ等が大きく、特定小型原付に該当しないものもあります。そのような電動キックボードは、従前どおり原付バイクと同様の扱いとなります。就業規則等で電動キックボードによる通勤について規定する場合、特定小型原付に該当するものだけでなく、該当しないものも対象となるような工夫が必要です。また、スタッフが特定小型原付に該当しない電動キックボードを使用して通勤する場合、運転免許証の写しの提出を義務付けるのがよいかと思います。

井上雅弘
●銀座誠和法律事務所

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