【感染制御学ノート】vol.130 新型コロナウイルス(続報27):DHstyle 2022年10月号

vol.130 新型コロナウイルス(続報27)

佐藤法仁 Norito SATOH
岡山大学 副理事(研究・産学共創担当)・URA
立命館大学 総合科学技術研究機構 教授
内閣府 上席科学技術政策フェロー

図❶ 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の形態モデルと電子顕微鏡で見たウイルス画像(青色で示しているもの)。形態モデルと電子顕微鏡写真ではウイルスに色がついているが、実際のウイルスにこのような色がついているわけではない(参考文献1,2)より転載)

DATA

分類:ウイルス
形態:球状
感染経路:飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染
ワクチン:実用段階

Point

  • 2022年9月2日現在、わが国では「第7波」の感染拡大が続いている。
  • 岡山大学のファイザー社製小児用新型コロナウイルスワクチン接種後副反応調査(対象のべ1,288人、1回目接種769人、2回目接種519人)では、ワクチン接種1回目と2回目ともに、接種後の副反応は、調査チームが実施した成人での調査と比較して少ない結果だった。
  • 37.5℃以上の発熱が1回目接種後で18人(2.4%)、2回目接種後で56人(10.8%)にみられたが、39℃を超えた小児は僅かだった。
  • 基礎疾患やアレルギー歴などの有無による発熱の出現頻度は、統計学的に有意な差はみられなかった。
  • 小児に対してワクチン接種を決めた理由としては、「子どもの感染を防ぐため」(83.5%)、「子どもが感染した際の重症化を防ぐため」(83.0%)が多かった。

おことわり

 本号では、現在流行している「新型コロナウイルス(図1)」について取り上げます。執筆時点(2022年9月2日)で判明している点を記載していますが、今後の研究および情勢などで執筆内容との齟齬、あるいは新たな点が明確となる可能性がおおいにあります。その点を考慮して、本号をお読みください。

はじめに

 本シリーズでは、2020年の4月号から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と、それが引き起こす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に対応し、さまざまな情報をお届けしてきました。2022年9月2日現在、わが国では「第7波」が続き、感染者や濃厚接触者の増加で交通や医療、教育などさまざまな機関で業務を縮小、あるいは停止しなくてはならない事態に陥っています。また、ワクチンについてはオミクロン株の急激な拡大に伴い、オミクロン株に対応したワクチン接種が当初の計画よりも前倒しで9月中に検討されています。
 感染拡大によりさまざまな影響が出ていますが、本号では、筆者の所属機関の1つである岡山大学で実施した研究調査について、紹介します。

小児用新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応調査

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の頼藤貴志教授らは、県民へ正確な情報提供を行うことを目的として、本年3~6月にかけて、ファイザー社製小児用新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応の頻度を評価しました。岡山県内の協力医療機関において、5~11歳対象のファイザー社製小児用新型コロナウイルスワクチンを接種し、接種後副反応調査に回答した者(のべ1,288人、1回目接種769人、2回目接種519人)の調査報告を出しています3)
 対象は、男児643人、女児645人で、5歳が106人、6歳が114人、7歳が128人、8歳が166人、9歳が198人、10歳が261人、11歳が315人です。
 ワクチン接種後の副反応は、接種1回目と2回目ともに、調査チームが実施した成人での調査4)と比較して少ない結果でした(表1、2)。全身の副反応でよく認められる発熱については、37.5℃以上の発熱が1回目接種後で18人(2.3%)、2回目接種後で56人(10.8%)にみられましたが、39℃を超えた小児は僅かでした。予防的措置を含む解熱鎮痛薬の使用についても1回目で55人(7.2%)、2回目で69人(13.3%)と多い数ではありませんでした。その他、倦怠感(だるさ)や筋肉痛などを認める数が多い結果となりました。
 局所の副反応では、接種場所の痛みが1回目560人(73.0%)、2回目333人(64.2%)と最も多く、これは成人の調査と同様でした(表1)。痛みの持続については、接種翌日まで認めた割合(1回目38.0%、2回目30.8%)が最も多い結果となりましたが、接種後3日目以降まで持続した痛みの割合(1回目2.6%、2回目3.5%)は低くなっていました。
 対象者の基礎疾患やアレルギーの有無などによる副反応について、基礎疾患がある場合では、(統計的優位差はないものの)痛みの訴えが少ない一方で、発熱の出現割合については基礎疾患のない人と大きな差を認めませんでした。またアレルギーをもつ小児では、1回目接種後の痛みの報告が多いものの、発熱については基礎疾患のない人と同程度でした(図2、3)。
 保護者が小児ワクチンの接種を決めた理由としては、「子どもの感染を防ぐため」(83.5%)、「子どもが感染した際の重症化を防ぐため」(83.0%)の割合が高く、「園や学校などで感染を広げないため」(56.5%)、「子どもが感染した後の後遺症を防ぐため」(51.2%)と回答した人が多い結果となりました(図4)。なお、「子どもの希望」、「スポーツチームへの所属」、「家族が医療介護従事者である」との回答も複数ありました。

 ファイザー社製小児用新型コロナウイルスワクチン接種後の接種回数別副反応出現の割合(参考文献3)より引用改変)

*表1の発熱の有無を聞いた質問と、表2の接種後の最高体温を聞いた質問は独立したものであり、誤差があり得る
*成人データは、岡山県内の医療従事者を対象としたファイザー社製新型コロナウイルスワクチン初回調査より抜粋

 ファイザー社製小児用新型コロナウイルスワクチン接種後の最高体温(参考文献3)より引用改変)

*表1の発熱の有無を聞いた質問と、表2の接種後の最高体温を聞いた質問は独立したものであり、誤差があり得る
*成人データは、岡山県内の医療従事者を対象としたファイザー社製新型コロナウイルスワクチン初回調査より抜粋

 基礎疾患をもつ小児の痛みと発熱の副反応(参考文献3)より引用改変)

図❸ アレルギーをもつ小児の痛みと発熱の副反応(参考文献3)より引用改変)

図❹ 小児に対してワクチン接種を受けることを決めた理由[複数回答](参考文献3)より引用改変)

おわりに

 今回は新型コロナウイルス感染症について、岡山大学が実施した研究調査報告の一例として、「ファイザー社製小児用新型コロナウイルスワクチン接種後副反応調査」を紹介しました。小児は、成人と比べて副反応に対して言葉で言い表すことが難しい点もありますが、1つの知見となればと思います。
 冒頭で述べたとおり、今後、オミクロン株に対応したワクチン接種が小児でも行われると思われますが、接種自体は強制ではありません。今回紹介した調査を1つの参考としていただくのもよいでしょう。
 今後もさまざまな研究報告を紹介し、自身と家族、患者らなどの健康の安全を守っていければと思います。本稿がそのための一助となりましたら幸いです。

参考文献

1)Centers for Disease Control and Prevention(CDC): Public Health Image Library, ID#23312,2020.
2)CDC: Public Health Image Library, ID#23354,2020.
3)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野:小児新型コロナウイルスワクチン接種後副反応調査(最終調査).国立大学法人岡山大学,2022. https://www.unit-gp.jp/eisei/wp/wp-content/uploads/2021/02/%E5%B0%8F%E5%85%90%E6%9C%80%E7%B5%82%E5%A0%B1%E5%91%8A_0704.pdf
4)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野:武田/モデルナ社製新型コロナウイルスワクチン追加接種(3回目接種)後副反応調査(最終報告).国立大学法人岡山大学,2022.https://www.unit-gp.jp/eisei/wp/?p=4923

(参考文献のURLは2022年9月2日最終アクセス)

https://www.dental-diamond.co.jp/item/1091