はじめに
令和4年1月現在のわが国における人口構成*を見ると、0~15歳未満が約11.7%を占め、また成長期の19歳以下を含めると16.2%です。
さらに出産準備を迎えている妊産婦を加えるとおおよそ17%でしょう。この数値は、一般開業医において「小児歯科」を標榜した場合、単純な比率ではありますが、前述の患者群が患者総数の約17%として来院することを意味します。歯科医院の経営戦略として、これらの患者群を対象とすることは極めて重要であるばかりか、一般開業医として早期から患者と向き合えることは、「かかりつけ歯科医」の意義とその役割を発揮できる機会の創出ともいえます。
さて、この患者群は極めて成長著しく、つねに変化する形態と機能、また外傷などの突発的な問題を引き起こしやすい環境にあり、対応すべき疾患や成長に応じた支援項目も多岐にわたります。では、現在の小児歯科標榜下における小児歯科医療の情報は質・量において、果たして十分でしょうか。あくまで筆者の私見ですが、他の分野と比較して医療情報の新陳代謝が少なく、大学教育当時の情報のままではないでしょうか。
そこで、今回は単なる症例紹介ではなく、現在の小児歯科における基本的な“原理原則”と、臨床において比較的遭遇しやすい“症例の対処法”の2部構成とし、それぞれに関連性をもたせるように企画しました。
本書後半のCase編執筆者には、可能なかぎり経過を追った症例の提示をお願いしました。歯科医療の症例報告では、10年経過を境に長期症例とされることをよく目にしますが、人生100年時代を迎える現在においては、-1歳から16~18歳までの小児の成長期中における2年間は、前述した成人における10年に匹敵するものと思われます。
ぜひ、多くの歯科医師が本書を手に取り、単なるテクニカルな紹介ではない、執筆者のポリシーとストラテジーが投影された症例を参考に、明日からの臨床に役立てていただければ幸いです。
(*:総務省統計局人口推計より)
2022年4月
編集委員 田中晃伸
CONTENTS
編著者プロフィール
本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。今回は、『臨床医のための小児歯科 Basic & Casebook』です。