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『だれのパンツ?』
絵本の表紙を指差して「だれのパンツ?」と尋ねたら、あなたはきっと「鬼のパンツ」と答えるでしょう。でも、答えは違います! では、正解は?
今回は、その意外な答えと、それを導き出す奇想天外なストーリーを楽しめる絵本『だれのパンツ?』を紹介します。
タロウはいつものように、団地にある公園に寄り道をして遊んでいました。すると、空から大きなヒョウ柄の、パンツのようなものが落ちてきて、「おーい、こっちこっち! 」という声がしました。団地に住む誰かの落とし物だと考えたタロウは、持ち主に届けようと思い、見当をつけた部屋の住人を訪ねましたが、その持ち主ではありませんでした。そこでタロウは、画家や闘牛士、さらにはゴリラや妙なカメレオンの部屋まで訪ねますが、持ち主はみつかりません。
やがて、4階建てだった団地がいつのまにか5階から7階、10階へと高くなり、幽霊や唐傘おばけなど人ならざる住人まで現れ、ますます怪しくなっていきます。でも、この絵本は怪談ではありません。むしろ、読者の怖いものみたさに応えつつ、独特の不思議な高揚感を生む「異世界冒険譚」なのです。
そして、タロウはついに、団地の屋上で落とし物の持ち主をみつけました。それは、大きな赤鬼でした。「なんだ、やっぱり鬼だったね」と訳知り顔で語るのはまだ早い! なんと落とし物は、鬼のパンツではなく、意外にも鬼の○○○だったのです。それが何かは、読んでのお楽しみといたしましょう。
また、読者にはもう1つ、別の楽しみも用意されています。実は、各ページに描かれた落とし物のヒョウ柄には、次に尋ねる住人が何者かを示すヒントが隠されています。そちらもどうぞ、お見逃しなく。
団地に潜む異世界から現実世界に戻る方法も型破りで、最後までドキドキさせられます。作者の画力も高く、待合室にぜひ置きたい絵本です。と、ここまで書いたところで気づいてしまった! 確か鬼のパンツは、ヒョウ柄ではなくトラ柄でしたね?!
大橋悦子 Etsuko OHASHI
JPIC 読書アドバイザー
歯科衛生士向け季刊誌『DHstyle 2024年春号』より、歯科医院の待合室にぴったりの素敵な絵本をご紹介いたします。今回は、『だれのパンツ?』です。