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Q&A
歯科一般 (2019年6月号)
Q 治療中に患者が特発性頭痛を起こした際の対応
●片頭痛や群発頭痛を有する患者がいます。これらを有する患者に対する歯科治療上の注意と、実際に発作を起こした場合の対応方法を教えてください。
──千葉県・T歯科医院
A
特発性頭痛である片頭痛、群発頭痛と歯痛の関連は少なくありません。

図1 頭痛日記。片頭痛の発作の前兆として、歯痛(赤丸部)が生じている
図1 頭痛日記。片頭痛の発作の前兆として、歯痛(赤丸部)が生じている

これらの神経血管性頭痛に伴う歯痛は、三叉神経第1枝からの関連痛により生じ、歯痛を主訴に歯科を受診する場合があることはよく知られています。
 現在、習慣性の頭痛の治療は、日本頭痛学会の慢性頭痛の診療ガイドライン、日本神経学会の慢性頭痛診療ガイドラインなどに沿うことが推奨され、脳神経内科、頭痛専門外来、脳神経外科などで診療します。未診断例や後述する発作頓挫薬を使用しても日常生活が継続できない制御不良例では、歯科通院の支障とならないよう、あらかじめ診療依頼を行うのがよいでしょう。 1.片頭痛患者への診療上の注意点
 片頭痛は、嘔気・嘔吐、光・音・体動に対する過敏症状などが随伴するため、欠勤・欠席の原因となります。また、上顎臼歯部の拍動性自発痛が片頭痛の症状と連動して生じることがあります。
 片頭痛の患者は、前述のとおり発作時には嘔気や運動過敏のため動けないので、歯科医院に来院するのは困難です。また、歯痛は片頭痛の発作と同期して生じるので、頭痛日記をつけてもらうと歯痛の様子とその原因の理解に役立ちます(図1)。片頭痛には鎮痛剤が無効なことがほとんどで、片頭痛発作の頓挫薬であるトリプタン製剤を使用することにより、1時間以内に日常生活への復帰が目指せます。あらかじめ患者自身が自分に合った処方薬を手元に置いておくことで、無駄なキャンセルを防ぎ、円滑な歯科治療の一助となるでしょう。
 来院中に発作を生じた場合、できれば蛍光灯などの光を避けた静かな部屋に誘導し、頓挫薬を使用してもらい経過をみます。薬効が十分であれば、当日の歯科治療を避ける理由はありません。
2.群発頭痛発作時の対応
 群発頭痛の有病率は、片頭痛の数十分の1程度と考えられますが、歯痛を伴う頻度は片頭痛より高く、より多くの患者にみられます。発作は飲酒により誘発されることが有名です。

図2 群発頭痛発作中の酸素吸入の様子
図2 群発頭痛発作中の酸素吸入の様子

 群発頭痛の発作は夜間に多いとはいえ、チェアー上で突然に発作が起こる可能性もあり、激烈な症状を訴えるため、医療者は冷静に対応することが大切です。疼痛は片側上顎臼歯から始まり、顔面、とくに眼の奥に焼け火箸が刺さると形容されるような激痛が15?180分ほど続き、“ピタっ”と止まります。顔を押さえてうずくまるくらいの疼痛発作が生じます。
 発作時には、各種トリプタン製剤が有効ですが、国内ではスマトリプタンの注射薬のみに保険適応があり、自己注射キットを持参している場合もあります。群発頭痛の場合も片頭痛と同様にあらかじめ処方を受けておく必要があります。また、発作に100%酸素吸入(マスク、7L/分、15分間)が有効な例があります(図2)。群発期は数週間以上続きますので、この期間には多くの例でベラパミルなどの発作予防薬が処方されており、服用の確認も必要と思われます。本症の場合も、自然にあるいは薬効で発作が頓挫されれば、当日の歯科治療を避ける理由はありません。

小見山 道1) 牧山康秀2)
日本大学松戸歯学部付属病院
口・顔・頭の痛み外来 1)痛み歯科 2)痛み医科

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