CAD/CAM冠の脱離を防ぐポイント
●CAD/CAM冠が保険導入され、当院でも相当数をセットしていますが、脱離して戻ってくるケースが多いです。咬合などに問題はなく、FMCだったら脱離しないと思えるケースでもです。周辺の先生方も同様に感じているようです。CAD/CAM冠専用のセメントを使っても外れてしまうのですが、なぜ脱離してしまうのでしょうか。
──宮城県・Y歯科医院
CAD/CAM冠は、ハイブリッドレジンブロックを材料にCAD/CAM法によって製作したクラウンです。高い物性の材料を使用しているので破折や摩耗しにくく、安定した予後が期待できます。一方で、FMCやHJCとは異なる状況での脱離の事例も報告されています。では、なぜこのような脱離が生じるのでしょうか。
CAD/CAM冠の材料であるハイブリッドレジンブロックは、高温・高圧下の最適条件で重合されているため、非常に重合度が高く、従来のコンポジットレジンよりも曲げ強度や硬さが向上しています。その反面、接着に有効な未重合部分がほとんどないため、レジン系材料であるにもかかわらず、接着性レジンセメントに対する接着が難しいという特徴があります。そして、クラウンに応力が加わったときに、金属冠よりも剛性が小さいため、セメント界面に応力が集中し、脱離の原因となると考えられています。
そこで、脱離を防止し、CAD/CAM冠の最高の臨床結果を引き出すためには、以下のような注意すべきポイントがあります。
1.安全な症例の選択
ハイブリッドレジンブロックがいくら高強度とはいえ、金属冠と同じ状況では使用できません。脱離を防止するには、CAD/CAM冠の接着力を安全に保つことを考える必要があります。まず、咬合面のクリアランスが確保できない場合や、過小な支台歯高径では使用は難しく、顕著なブラキシズムがある場合は適応とはいえません。部分床義歯の支台歯や最後方臼歯になる場合は、過度の咬合力が加わる危険性があります。
2.適切な支台歯形成
CAD/CAM冠の脱離を防止するには、支台歯との良好な適合も重要なポイントとなります。接着性レジンセメントを使用しても、必要以上にセメントスペースが大きければ、接着力が低下します。また、CAD/CAM冠の適合を良好に保つためには、支台歯形成が重要です。咬合面で1.5〜2.0mmのクリアランスを確保し、滑沢かつ単純な形態で、咬合面と軸面の凸隅角は丸みをもたせ、マージン形態はディープシャンファーに、円滑で明確なマージンラインを基本とします。
CAD/CAM法でクラウンを製作する際に、イレギュラーな支台歯形態に対し、必要以上にクラウン内面のスペースが大きく設定される場合があり、これらの注意点を守らなければ想定以上に不適合となることがあります。
3.確実な接着操作
CAD/CAM冠の脱離に遭遇した際は、支台歯表面とクラウン内面をよく観察してください。支台歯表面にセメントが残留している場合は、CAD/CAM冠側の接着エラーが推定されます。この原因として、CAD/CAM冠内面に対して合着直前にアルミナサンドブラストが適切に行われていない、被着面の汚染、シランカップリング処理が適切に行われていないなどが考えられます。また、CAD/CAM冠用のハイブリッドレジンブロックは、製品によって、モノマー成分やフィラーの大きさ、形態、含有量などが異なるため、ブロックと接着性レジンセメントとの相性の優劣があるので注意が必要です。
支台歯表面にセメントが残留していない場合は、支台歯側の接着エラーが推定されます。原因として、支台歯の汚染やセメントと支台歯表面の接着力不足が考えられます。支台歯といっても歯質や金属、レジンなど、いろいろな種類の物質に対する接着力が要求されますので、多用途プライマーの併用も考慮すべきです。ほとんどの接着性レジンセメントは、光照射を行ったとしてもクラウン内部での硬化は十分に進行していないので、患者さんに対して、合着後1日は強く咬合しないように説明しておいたほうが安全です。
CAD/CAM冠は優れた特徴をもつ修復物ですが、残念ながら万能ではありません。まずは無理せず、適材・適所で安全な症例を確実に行うことから始めてはいかがでしょうか。
CAD/CAM冠の材料であるハイブリッドレジンブロックは、高温・高圧下の最適条件で重合されているため、非常に重合度が高く、従来のコンポジットレジンよりも曲げ強度や硬さが向上しています。その反面、接着に有効な未重合部分がほとんどないため、レジン系材料であるにもかかわらず、接着性レジンセメントに対する接着が難しいという特徴があります。そして、クラウンに応力が加わったときに、金属冠よりも剛性が小さいため、セメント界面に応力が集中し、脱離の原因となると考えられています。
そこで、脱離を防止し、CAD/CAM冠の最高の臨床結果を引き出すためには、以下のような注意すべきポイントがあります。
1.安全な症例の選択
ハイブリッドレジンブロックがいくら高強度とはいえ、金属冠と同じ状況では使用できません。脱離を防止するには、CAD/CAM冠の接着力を安全に保つことを考える必要があります。まず、咬合面のクリアランスが確保できない場合や、過小な支台歯高径では使用は難しく、顕著なブラキシズムがある場合は適応とはいえません。部分床義歯の支台歯や最後方臼歯になる場合は、過度の咬合力が加わる危険性があります。
2.適切な支台歯形成
CAD/CAM冠の脱離を防止するには、支台歯との良好な適合も重要なポイントとなります。接着性レジンセメントを使用しても、必要以上にセメントスペースが大きければ、接着力が低下します。また、CAD/CAM冠の適合を良好に保つためには、支台歯形成が重要です。咬合面で1.5〜2.0mmのクリアランスを確保し、滑沢かつ単純な形態で、咬合面と軸面の凸隅角は丸みをもたせ、マージン形態はディープシャンファーに、円滑で明確なマージンラインを基本とします。
CAD/CAM法でクラウンを製作する際に、イレギュラーな支台歯形態に対し、必要以上にクラウン内面のスペースが大きく設定される場合があり、これらの注意点を守らなければ想定以上に不適合となることがあります。
3.確実な接着操作
CAD/CAM冠の脱離に遭遇した際は、支台歯表面とクラウン内面をよく観察してください。支台歯表面にセメントが残留している場合は、CAD/CAM冠側の接着エラーが推定されます。この原因として、CAD/CAM冠内面に対して合着直前にアルミナサンドブラストが適切に行われていない、被着面の汚染、シランカップリング処理が適切に行われていないなどが考えられます。また、CAD/CAM冠用のハイブリッドレジンブロックは、製品によって、モノマー成分やフィラーの大きさ、形態、含有量などが異なるため、ブロックと接着性レジンセメントとの相性の優劣があるので注意が必要です。
支台歯表面にセメントが残留していない場合は、支台歯側の接着エラーが推定されます。原因として、支台歯の汚染やセメントと支台歯表面の接着力不足が考えられます。支台歯といっても歯質や金属、レジンなど、いろいろな種類の物質に対する接着力が要求されますので、多用途プライマーの併用も考慮すべきです。ほとんどの接着性レジンセメントは、光照射を行ったとしてもクラウン内部での硬化は十分に進行していないので、患者さんに対して、合着後1日は強く咬合しないように説明しておいたほうが安全です。
CAD/CAM冠は優れた特徴をもつ修復物ですが、残念ながら万能ではありません。まずは無理せず、適材・適所で安全な症例を確実に行うことから始めてはいかがでしょうか。
疋田一洋●北海道医療大学歯学部
口腔機能修復・再建学系 デジタル歯科医学分野