Q&A インプラント 1-IODの優位性と適応症|デンタルダイヤモンド 2022年12月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2022年12月号より「1-IODの優位性と適応症」についてです。

近年、当院では、無歯顎の高齢者への対応として、IOD(インプラントオーバーデンチャー)で治療を行うことが増えてきました。そこで、1-IODと2-IODを比べたときの1-IODの優位性や適応症を教えてください。         神奈川県・Eデンタルクリニック

『York consensus statement』(2009)にて、1-IODは有効であるとの世界的コンセンサスが得られています。
 また、2020年の『Journal of Prosthodontics』に投稿されたメタアナリシスでは、Hariniらは下顎無歯顎における1-IODにおける使用インプラントの5年生存率:91%、10年生存率:84.6%と報告しており、過去に報告された2-IODの使用インプラントの生存率とはほぼ差がないという報告があります。
 つまり、2-IODと比較して、1-IODはCost-effectiveであること、低侵襲であることがその優位性として挙げられます。インプラントの設置部位に関して言及された論文はありませんが、オトガイ孔間に埋入されているケースが多いように感じます。実際の筆者のケースを供覧します(図1)。


表❶ 1-IODで対応した症例
図❶ 1-IODで対応した症例

患者:80歳代、女性
主訴:入れ歯が入れていられない
現症:下顎の顎堤がほぼ吸収しており、口腔前庭と歯槽頂が連続し、義歯が入れられない状況
経過相当部位にLocator attachmentを1本使用した義歯を作製して経過観察中。義歯を入れられるようになり、現在に至る
考察:下顎の顎堤の著しく吸収したケースにおいて、粘膜負担のある総義歯ではどうしても対応できない症例が存在する。このような症例に対し、1-IODは有効であり、「義歯が入れられない→義歯が入 れられる」といういわば“0”→“1”へと変化させられる治療である。また、Locator attachmentを用いることにより、必ずしもオトガイ孔間の正中ではなく、骨のある部位にインプラントを埋入しても、義歯床の厚みや角度を気にせずに補綴可能であるため、幅広く用いられる治療と考えられる

 筆者の個人的な見解ですが、1-IODの適応症は「下顎の義歯が安定しない患者」だと考えます。
 1-IODから2-IODへの変更も可能であり、食事の指導やオーラルフレイルに対する口腔のリハビリも行えます。超高齢社会であるわが国において、形態の回復だけでなく、機能回復まで行える歯科医院は重宝されるでしょう。参考になさってください。

【参考文献】

1)Harini Padmanabhan, et al.: Single Implant Retained Overdenture Treatment Protocol: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Prosthodont, 29(4):287-297, 2020.(doi: 10.1111/jopr.13133. Epub 2019 Dec 27)

新名主耕平
●東京都・新名主歯科・口腔外科医院

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