本のエッセンス|刊行にあたって:口腔インプラント臨床における予防歯科 ~長期安定のための診断と術後管理~

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。

この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。

今回は、『口腔インプラント臨床における予防歯科~長期安定のための診断と術後管理~』です。

刊行にあたって

 近代歯科学の現状を考えると、1970年代の経済成長期にはおびただしいう蝕の蔓延がみられ、その治療が全盛であった。そのときの反省から公衆衛生および個人の口腔衛生を主体とする予防歯科学が日本歯科医師会および日本学校歯科医師会と個人開業医の努力により、疫学的には学童を含むdmf指数やDMF指数が低下し、現在ではその罹患率が激減した。
 しかし、歯周病に関しては増加傾向にあり、全国の歯科大学・歯学部の専門医や開業の専門医が治療に専念し、それ相応の処置を行っている。しかし、疫学的にはそのフェードがかからず低迷している。また、従来型の義歯やブリッジなどの補綴治療においても限界があり、ともに歯と歯槽骨を失う環境は1日24時間使用や免疫学上の問題があり、咀嚼機能・嚥下機能・口腔各諸組織の維持向上に課題を残している。そのことは顎顔面の形態学上明白である。
 そのようななか、歯科医学の日進月歩で進歩したのが、現在の口腔インプラント学である。その取り組みは、日本口腔インプラント学会が日本の歯科関連学会で最大会員数となり、インプラントが普及して歯科医療の中で大きなウエイトを占めている。また、顎の再生を含む治療にも関与できている。いまでは患者の高い満足度が得られている。そのため、インプラントのメインテナンスが大切と考えられ、それなりに臨床現場で行われている。
 インプラントは限りなく天然歯に近く、顎の保全と維持を含めて生理的機能も類似しているがゆえに、義歯のメインテナンスやブリッジのケアだけではおぼつかない。そこで、抜本的な予防歯科的な理論と実際の臨床が必要となる。
 そこで、本書『口腔インプラント臨床における予防歯科~長期安定のための診断と術後管理』では、歯科における予防歯科と同じ理論をもつべきだとして書かれている。このことは、私が以前に著した『Clinical Manual of Preventive Dentistry(予防歯科的診断と各処置)』が土台となっており、その理論をもって既往歴・全身状況・局所診断から実地までを臨床例を交えて各医学徒とまとめてみた。
 このことは、現在、国民・政府の間で高まってきている歯科への期待に応えるべき内容でもあり、重要な著書となり得るだろうと考えている。

2022年6月

一般社団法人東京形成歯科研究会 理事長
王子歯科クリニック・美容外科 総院長

奥寺 元

CONTENTS

https://www.dental-diamond.co.jp/item/1083

監修・著者略歴

奥寺 元(おくでら はじめ)
医学博士

公益社団法人 日本口腔インプラント学会指導医 元理事
一般社団法人 東京形成歯科研究会理事長
元神奈川歯科大学客員教授、元東京医科歯科大学臨床助教授
国際インプラント学会ICOI元会長、ISBB国際血液臨床応用再生医療会議理事長
王子フィットネス&GYM代表、王子歯科クリニック・美容外科総院長

1971年 神奈川歯科大学卒業、同口腔衛生学予防歯科勤務
1972年 米国オレンゴン大学留学
1975年 神奈川歯科大学口腔衛生学予防歯科非常勤講師、城西歯科大学非常勤講師
1975年 日本大学医学部薬理学教室特別研究生
2002年 ISBB国際血液臨床応用再生医療会議(指導医)理事長
2004年 東京医科歯科大学歯学部臨床助教授(非常勤)
2005年 神奈川歯科大学人体構造学講座客員教授
2005年 公益社団法人 日本口腔インプラント学会理事
2005年 ICOI(国際インプラント学会)回超、一般社団法人 東京形成しか研究会理事長
2008年 フィリピン国際歯科大学教授、台湾・台北医科大学客員教授
2013年 日本再生医療学会会員
2016年 日本再生医療学会歯科連絡ネットワーク委員
2019年 TOP MEDICAL DR 100に選出