三叉神経痛のイメージは、「激烈な電撃様疼痛を呈する、極めて特徴的な発作痛」で、歯科医師ならば誰でも知っている病気だが、診断の難しい痛みである。
なぜ診断が難しいのかというと、診査によって「激烈な電撃様疼痛」を再現することが難しいこと、患者が『「強い、発作性の痛み」があります』とは訴えず、逆に控えめに痛みを訴えることが多いからである。
三叉神経痛かと思ったら、下記の国際頭痛分類三叉神経痛の診断基準を含んだ構造化問診をすることが有用となる。
1)痛みは一瞬、あるいは数秒ですか?、2)短いが強い痛みですか?、3)痛みは走るような、突き刺すような感じですか?、4)食事、会話、歯ブラシ、洗顔などで誘発されますか?
以上によって、三叉神経痛の疑いが高まったら、トリガーゾーンの有無、不応気の有無などを確認した後に痛み発作を誘発再現することを試みる。
なお、国際頭痛分類第3版の「13.1.1三叉神経痛」には、以下のような診断基準が記されており、「13.1.1三叉神経痛」は臨床的に診断され、検査は三叉神経痛の原因を特定するために行われる。
【診断基準】
A.三叉神経枝の1つ以上の支配領域に生じ、三叉神経領域を越えて拡がらない一側性の発作性顔面痛を繰り返し(注❶)、BとCを満たす。
B.痛みは以下のすべての特徴をもつ。
①数分の1秒~2分間持続する(注❷)。
②激痛(注❸)。
③電気ショックのような、ズキンとするような、突き刺すような、または、鋭いと表現される痛みの性質。
C.障害されている神経支配領域への非侵害刺激により誘発される(注4)。
D.他に最適なICHD-3の診断がない。
注❶:少数例では障害されている神経の支配領域を越えて痛みが広がることもある。その場合でも痛みは三叉神経の皮膚分節内に留まる。
注❷:発作痛の持続時間は経過中に変化し、徐々に延長することがある。発作痛が主として2分を超えて持続すると訴える患者は少数である。
注❸:痛みは経過中に重症化していくこともある。
注❹:痛みの発作は自発痛として、または、自発痛のように感じられることがある。ただし、この診断に分類するためには、非侵害刺激によって痛みが誘発された既往や所見がなければならない。理想的には、診察医は痛みを誘発する現象が再現されることを確認するべきである。しかし、患者が拒否したり、トリガーの解剖学的位置が刺激困難であったり、他の要因によって必ずしも確認できないこともある。