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刊行にあたって
2016 年に日本老年歯科医学会が発表した、高齢期の口腔機能低下に関する学会見解論文をもとに、2018 年4月に口腔機能低下症の検査・管理が保険導入されました。この2018 年の保険導入に際して、本書の初版が刊行されました。
本書は当時の歯科界には馴染みのない口腔機能低下症の解説のため、学会監修の書籍として、保険導入の立役者であり、当事の理事長であった櫻井 薫先生と、学術委員長であり学会見解論文の責任者であった私が編著を担当しました。その2年後の2020 年保険改定に合わせて、理事長であった佐藤裕二先生と櫻井先生、私で第2版を編集しました。
さらに2022 年の保険改定に合わせて、第3版も出版いたしました。このときの保険改定では、「口腔機能低下症」の適用範囲が50 歳まで引き下げられました。それは、65 歳以下のプレ高齢者、中年期の方々にも多くの患者が存在し、その時期から口腔の機能低下に対処しようとするものでした。
そして、2024 年には医療・介護・障害福祉のトリプル改定が実施されようとしていますが、そのなかで「口腔機能低下症」にも大きな変化がみられます。今回の第4版の編集に関しては、これらの内容を盛り込んだかたちになっています。
さて、本年4月1 日に日本老年医学会、日本老年歯科医学会、日本サルコペニア・フレイル学会が協議し決定した、オーラルフレイルの定義が発表されました。詳細は各学会のホームページにあたっていただければと思いますが、これまでは各研究論文中で各々設定されていたオーラルフレイルの基準が、初めてアカデミアによって決定され公になったのです。これにより、国民自身がオーラルフレイルかどうかを判断し、かかりつけ歯科医で「口腔機能低下症」の検査と指導をしてもらう、という流れがより明確になりました。
これにより国民の歯科受診のモチベーションが高まると考えられますので、かかりつけ歯科医の先生方におかれましては、検査希望の患者が来院した際には、オーラルフレイルについて説明してもらい、「口腔機能低下症」の検査を実施し、う蝕や歯周病があればその治療を、義歯が不調であれば新製や調整をしてもらいたいと思います。その診療の過程で、口腔体操の指導やオーラルフレイルの原因の一つである「社会性の低下」に注意するよう指導してほしいと思います。
本改訂版の編著は、現在理事長を拝命しております私が担当させていただいていますが、前述のお二人の理事長と、何といっても学会見解論文の作成以来、苦楽を共にしてきた学術委員会のメンバーのご尽力によってなされていることをあらためて申し上げ、感謝したいと思います。
日本老年歯科医学会は引き続き高齢者の口腔健康に留意し、さらに「口腔機能低下症」をブラッシュアップして、歯科医療関係者がもっと国民の健康長寿に貢献できるようにしてゆく決意であることを表明し、刊行にあたってのご挨拶とさせていただきます。
2024 年6月
一般社団法人日本老年歯科医学会 理事長
東京医科歯科大学 名誉教授
同大学大学院高齢者歯科学分野 前教授
水口俊介
CONTENTS
水口俊介(みなくち しゅんすけ)
1983年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
1987年 東京医科歯科大学大学院歯学科研究科修了
1989年 東京医科歯科大学歯学部高齢者歯科学講座助手
2001年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔老化制御学分野講師
2005年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野准教授
2008年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 全部床義歯補綴学分野教授
2013年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野教授
2024年 東京医科歯科大学名誉教授
《所属学会》
日本老年歯科医学会
日本補綴歯科学会
日本咀嚼学会
日本義歯ケア学会
日本磁気歯科学会
本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行にあたって」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行にあたって」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『2024年保険改定対応 かかりつけ歯科医のための口腔機能低下症入門』です。