Q&A  補綴 CAD/CAMによる修復物の適合性を向上させるには?|デンタルダイヤモンド 2023年3月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2023年3月号より「CAD/CAMによる修復物の適合性を向上させるには?」についてです。

CAD/CAMでの修復物作製がうまくいきません。破折やチッピングを防ぐための「窩洞の単純化」について教えてください。 ●岩手県・O歯科

1.窩洞の単純化とは

「窩洞の単純化」とは、印象採得し、ソフト上で修復物をデザイン、加工機で作製するまで、とくに口腔内スキャナー(IOS)から始まるデジタルワークフローの流れのなかで、鳩尾形のような複雑な形態をなくし、口腔内での適合性を向上させるために行う処置です(図1〜3)。

2.窩洞の単純化がなぜ必要なのか

 適合させるのは当たり前のことですが、模型レスで効率よく、円滑に、的確に修復治療を行うためには、適した形成とそれを行うための環境を整えることが必要不可欠です。この環境づくりが「窩洞の単純化」で、その目的は3つあります。

1)加工機が設計したデザインを再現しやすい形にする
 加工機のバーの挿入方向、動きには機種によって制限があり、それを理解して形成を行わなければいけません。鳩尾形のような複雑な形は、切削バーの直径よりも細かくなければ削合することは可能ですが、機械的強度が不十分な部分が生じやすく、不適合やチッピングを招きやすいため、デザインの再現性を低下させてしまいます。

2)適切な厚みを作る
 う蝕除去後にIDS(Immediate Dentin Sealing)を行うことで、修復物の厚みの適正化を行います。この適正な厚みとは、最低限の強度を担保し、加工機が再現できる厚みのことです。また、最終的に何を用いて接着するのかにも影響します。コンポジットレジンを用いて接着する場合は、界面が目立ちにくいというメリットがありますが、光が届く距離に制限があるため、それを意識したIDSと形成を行う必要があります。
 また他にもIDSは、修復物との接着の向上、外部刺激からの象牙質の保護の意味もあります。

3)マージンラインを歯肉縁上に設定する
 IDSとともにDME(Deep Margin Elevation)を行うことで、IOSが認識しやすい位置までマージンラインをもっていき、できるだけセメントラインを不潔域から離すことで二次う蝕を防ぎ、また接着操作の際には、縁上セメントを取りやすいので残留セメントのリスクを減少させることができます。

図❶ 細い、薄い、複雑な形態を有している修復物は加工中に破折しやすい
図❷ 修復物、う蝕を除去した状態。このまま裏装だけを行い修復物を作製すると、赤点線部のような形になる。すると、青点線部の箇所は作製中のエラーに繫がりやすい
図❸ 窩洞の単純化を行うことで、スキャン、加工時にエラーの少ない形成を行える

桑原 崇
●佐賀県・とがし歯科医院

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