書評:なぜ自費率50%の歯科医院をめざすのか

歯科医師向け月刊誌『デンタルダイヤモンド』のTOOTH STATION掲載の”書評”をご紹介いたします。今回は、『なぜ自費率50%の歯科医院をめざすのか』の書評を、前田大輔先生(北海道・札幌駅前歯周病インプラントセンター まえだ歯科医院)に執筆いただきました。
是非ご一読ください。

『なぜ自費率50%の歯科医院をめざすのか』

 「臨床をしっかり行っていれば経営はうまくいく」
 「よい治療を行えば、自然と口コミから患者さんは増えて、自費治療も増えていく」
 卒業後、必死に技術を磨き、手も動くようになって、約10年前に父の歯科医院を継承するため地元に戻ってきてすぐに、それは大きな間違いであると気づくことになる。技術を活かすことのできる患者さんは来院せず、しばらくは保険治療をさばく日々を過ごした。
 もしこのときに本書に出合っていれば、自分の理想とする歯科治療を行い、それを受け入れてくれる患者さんが来院する歯科医院を、戦略的に、そして無駄なコストや時間をかけずに最短で作ることができただろう。
 本書は、日本のデジタル歯科、インプラント治療のトップランナーである丸尾先生が、自身の経験をもとに臨床と経営のバランスの取れた歯科医院の作り方を解説している。タイトルに掲げられている「自費率50%」は、決して単なるお金儲けではなく、患者さんによりよい歯科治療を提供し、臨床と経営のバランスが取れた一つの目標数値であると理解してほしい。これより自費率が低いと、設備投資やスタッフへの福利厚生が不十分になり、医院の成長は停滞する。逆に自費率が高すぎると、院長一人が自費治療にかける時間の負担が大きくなり、もし病気や怪我で診療できなくなってしまった場合に、一時的に収入が激減してしまうリスクをはらんでいる。
 令和の時代、スマートフォンの普及が進み、患者さんは必ずといってよいほどホームページや口コミを見て来院する。本書では、自費率50%を目指すためのSNSを含めたWeb戦略や、広告に関する知見が解説されており、いかにして来てほしい患者さんにアピールし、ブランディングを進めるかが示されている。
 腕がよければ患者さんが来る時代は、終わったといっても過言ではない。その反面、技術の研鑽をそこまでしなくても、広告を通じてうまく集患することも可能になってしまった。
 しかし、そうした時代であっても、臨床スキルの向上に日々勤しんでいる先生も非常に多く存在している。そのような先生にこそ、ぜひ本書を読んでほしい。臨床と経営の二刀流・「歯科界の大谷翔平」になるヒントが、本書にはたくさん詰まっている。
 正直者が馬鹿をみる時代にならないことを切に願っている。

[デンタルダイヤモンド 2022年11月号掲載予定]

[著] 丸尾勝一郎(東京都開業)

A5判/216頁/オールカラー 定価(本体6,300円+税)
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