待合室の絵本コンシェルジュ:DHstyle 2023年4月号

歯科衛生士向け月刊誌『DHstyle』より、歯科医院の待合室にぴったりの素敵な絵本をご紹介いたします。今回は、『あまがえるりょこうしゃ トンボいけたんけん』です。

『あまがえるりょこうしゃ トンボいけたんけん

 絵本を開けばあっという間に到着しますが、車では決して行けないところ……。そんな場所で行われるネイチャーアクティビティに参加しませんか? 参加費は、お弁当付きで500円(!?)と格安です。今月は、そんな楽しいツアーを描いた絵本『あまがえるりょこうしゃ トンボいけたんけん』を紹介します。

 ツアーコンダクターは、あまがえる。お手製のペットボトルのボートで、トンボ池を探検します。乗客は、テントウムシ・ダンゴムシ夫妻・カタツムリという3組の陸の生きものたちで、みんな探検を楽しみにしています。
 では、さっそく出発です。ペットボトルボートは水中がはっきり見えて、乗客たちは大喜び。逆に、水中のメダカたちも、陸に住む乗客たちを珍しそうに眺めています。おや、コオイムシのお父さんが、背中に卵をたくさん付けて泳いでいます。すると運よく、卵から赤ちゃんが生まれるのが見えました!! 他にも、水の上と水の中を同時に見るために目が4つあるミズスマシや、水の上に落ちてくるエサを捕まえるために背泳ぎをしているマツモムシなど、少し変わった虫たちがたくさんいて、乗客たちは目を丸くしています。
 「あっ、みなさん舟に隠れてください!!」。突然あまがえるの声が響きました。飛んでいる虫を捕食するギンヤンマが現れたのです。しかも、池の底からは「助けてくれ〜」という悲鳴が聞こえます。一体何が起こったのでしょうか? そして、乗客たちの運命やいかに?
 本書は、スリル満点の探検物語としてはもちろん、食物連鎖や生態系について学べる科学絵本としても、面白く読めます。作者の松岡達英氏は、日本の自然科学絵本の第一人者と言っても過言ではありません。主人公のあまがえるだけはデフォルメされていますが、それ以外の生きものたちは、実にリアルに描かれています。それでもどこか愛らしく、時に美しくも見えるのは、自然を愛する作者の心と絵筆がなせる業(わざ)ではないでしょうか。

おひさま堂 書籍部
大橋悦子

作:松岡たつひで
出版社:福音館書店


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