- 再根管治療時にファイルが届かない場合がよくあります。しっかりと根尖の残髄を除去するためには、どのように根管拡大を行えばよいでしょうか。 大分県・A歯科クリニック
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再根管治療にかぎらず、抜髄根管でもファイルが根尖方向に届かない場合もあります。多くの場合は、レッジが原因でファイルがオリジナル根管に入っていかないことが挙げられます。次に、石灰化・狭窄によりファイルが進まないことが考えられます。
1.レッジのある根管の対応
レッジへの対応としてはまずバイパス形成を行い、修正ガイド形成に移ります1)。バイパス形成にはC+ファイルにプレカーブを付与し、ウォッチワインディングモーションまたはターンアンドプルモーションにて根管の入り口を偵察します。これを「キャナル・スカウティング」と呼びます。コツとしては、ファイルを1方向のみ器具操作するのではなく、少しずつ回転させながら偵察していきます。
オリジナルの根管の入り口が確認できればショートストロークのファイリングをし、修正ガイド形成を行います。現在では、マルテンサイトファイルにプレカーブを付与し、コールドスプレーで冷却・ファイル形状維持を図り、把持用ピンセットで根管内に挿入し、エンド用エンジンに接続して使用します。2.石灰化または狭窄している根管の対応
外傷や歯髄保存療法後に根尖性歯周炎を起こしている、石灰化または狭窄している根管では、次亜塩素酸ナトリウム溶液を初期段階で使用せずEDTAを中心に洗浄し、器具操作を進めます。これら両洗浄液を同時に使用し、EDTAの作用時間が長くなると過剰脱灰の懸念が高まるからです。
初めの段階からEDTAのみを使用している場合には、そのようなリスクはほとんどなく、安全に治療を進めることが可能です。ナノバブルとEDTAを併用した場合、5分間使用しても根管象牙質の脱灰は見られなかったとの報告もあり2)、安心して使用できます。C+ファイル#6→Kファイル#6→C+ファイル#8→Kファイル#8→C+ファイル#10→Kファイル#10の順にウォッチワインディングモーションにて器具操作を行い、ファイルが少しずつバインドしながら根尖方向に進んで行けば、オリジナル根管の可能性が高いと考えます。このとき、バインドした際はこの手順を2~3回繰り返し行い、ネゴシエーションから穿通の確認を行います。
穿通できれば作業長を決定し、グライドパスの形成を行います。穿通しなければ、ファイルが到達した最も深く挿入できた長さを作業長として根管形成を行います。たとえ根尖病変が存在して穿通できなく、さらに根管全体の1/3しか形成充塡できなくても、62.5%成功したとの報告もあります3)。決して無理せず、できるところまでで留めておき、レッジや穿孔といった新たな偶発症を起こさないように注意してほしいと思います。
【参考文献】 1) 牛窪敏博:レッジを伴った上顎大臼歯の根管治療.日歯内療誌,35(3):138-144,2014.
2) 庵原耕一郎,中島美砂子:閉塞根管拡大のためのナノバブル水含有EDTAによる脱灰効果促進.日歯保存誌,62(3):152-158,2019.
3) Anna Akerblom, Gunnar Hasselgren: The prognosis for endodontic treatment of obliterated root canals. J Endod, 14: 565-567, 1988.
牛窪敏博
●大阪府・U’ z デンタルクリニック
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