Q&A 歯科一般 ジルコニアインプラントの可能性|デンタルダイヤモンド 2024年4月号

Q&A 歯科一般 ジルコニアインプラントの可能性|デンタルダイヤモンド 2024年4月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2024年4月号より「ジルコニアインプラントの可能性」についてです。

国内では医用材料として認可されていませんが、ドイツなどではチタンアレルギーの患者に対して、ジルコニアインプラントを使うことがあると耳にしました。ジルコニアインプラントのメリット・デメリットを教えてください。 秋田県・W歯科

 チタンインプラントは歯科インプラント市場の約91% 1)を占めています。一方、インプラント周囲炎の発症が比較的高いこと、アレルギー患者には不適であることなどから、より高い生体適合性をもつインプラント材料が要望されています。
 ジルコニアインプラントはその候補の1つですが、現在は数%の使用に留まっています。しかし、2023~2031年の年平均成長率は欧米では約6%で増加していくと予測されています2)。したがって、ジルコニアは今後、注目すべきインプラント材料であると思います。
 以下に、ジルコニアインプラントのメリットとデメリットを整理します。

1.メリット
1)透光性
 透光性があります。ジルコニアは透明とはいえませんが、散乱しながら透過する光があるため、チタンインプラントのような歯頸部のグレーゾーンは生じず、ジルコニアインプラントは審美性の高い修復が可能となります。とくに、前歯部では顕著な審美性の違いがあるといわれています。

2)化学的安定性
 化学的に非常に安定しています。金属ではなく安定な酸化物であるため、生体内環境における金属イオンの溶出は非常に少なく、したがって、アレルギー発症の可能性は非常に低くなります。

3)強度の長期安定性
 強度が高く、長期安定性も良好です。適正な条件で製造したジルコニアであれば、疲労破壊や化学的劣化の可能性は低く、口腔内で長期に高い強度を維持できます。

4)バクテリア(歯石)の低付着性と上皮粘膜との密着性
 表面でのバクテリア(歯石)の付着が少なく、上皮粘膜と良好に密着します。ジルコニアは鏡面研磨すると撥水性が大きく、バクテリア(歯石)の付着が少ないことが報告されています3)
 一方、上皮粘膜にはヘミデスモゾーム結合により良好に密着することが確認されています4)。したがって、ジルコニアインプラントはインプラント周囲炎になりにくいと期待されています5)

5)X線吸収係数
 ジルコニアのX線吸収係数は、チタンより約4倍大きく6)、明瞭なX線不透過像が得られます。

2.デメリット
1)本体価格
 本体価格が高くなります。さらに金属アレルギー患者の場合はドリルやピンセットもジルコニア製を用いることが推奨されるため、これら専用器具の費用も必要です。

2)特殊な表面処理
 骨結合のためには特殊な表面処理が必要です。各社特有の表面処理がされており、適正な処理がされていれば骨結合し、短期の経過状態でチタンインプラントと有意な差はないと報告されています7)。しかし、2ピースタイプの長期経過の報告は少なく、今後の報告を待つ必要があります。

3)破損
 条件によっては割れます。金属は限度以上の応力(降伏点)が負荷されると塑性変形します。しかし、ジルコニアはセラミックスであり、降伏点を越えると塑性変形はせず、破損します。また、製造プロセスの不具合による傷や設計不良による形態不良があると、応力集中し、割れやすくなります。

4)2ピースタイプの接合
 2ピースタイプのジルコニアインプラント(図1)が多く市販されていますが、接合には注意が必要です。接合ネジはチタン製も使われますが、メタルフリーインプラントを望む場合はセラミックス製ネジが使われます。 しかし、セラミックス製ネジは過度に締め付けるとネジ自体だけでなく、ジルコニア製アバットメントおよびフィクスチャーが破壊されやすいため、トルク制御ドライバーが必要となります。または、グラスファイバー強化レジンなどの締め付け可能なネジ材料が使われます。さらに、取り外しのできない嵌合タイプがあります。

5)日本では未承認
 医用材料として日本では承認されていません。トラブルが生じた場合の対応を検討しておく必要があります。

図❶ IDS 2023 において、2ピースタイプのジルコニアインプラントが展示されていたNEODENT 社(Straumann Group)のブース
図❶ IDS 2023 において、2ピースタイプのジルコニアインプラントが展示されていたNEODENT 社(Straumann Group)のブース
【参考文献】

1) Bollen CML, et al.: Zirconium-dioxide as preferred material for dental implants. Ceramic Implants, 4: 20-21, 2020.
2) Business Research Insight: https://www.businessresearchinsights.com/enquiry/requestsample-pdf/zirconia-dental-implant-market-100704 (2023.11.13.)
3) Gupta S: Immediate molar replacement with a twopiece zirconia implant and glass fibre abutment. Ceramic Implants, 14: 20-23, 2023.
4) Okabe E, et al.: Adhesion properties of human oral epithelial-derived cells to zirconia. Clin Implant Dent Relat Res, 18(5): 906-916, 2016.
5) Webber LP, et al.: Will zirconia implants replace titanium implants? Appl Sci, 11: 6776, 2021.
6) Okuda Y, et al.: Radio-opacity of core materials for allceramic restorations. Dent Mater J, 29(1): 35-40,2010.
7) Sadowsky SJ: Has zirconia made a material difference in implant prosthodontics? A review. Dent Mater, 30(1): 1-8, 2020.

伴 清治
●愛知学院大学歯学部 歯科理工学講座

デンタルダイヤモンド 2024年4月号 表紙

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