【感染制御学ノート】vol.134 新型コロナウイルス(続報31):DHstyle 2023年3月号

vol.134 新型コロナウイルス(続報31)

佐藤法仁 Norito SATOH
岡山大学 副理事(研究・産学共創担当)・URA
立命館大学 総合科学技術研究機構 教授
内閣府 上席科学技術政策フェロー

図❶ 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の形態モデルと電子顕微鏡で見たウイルス画像(青色で示しているもの)。形態モデルと電子顕微鏡写真ではウイルスに色がついているが、実際のウイルスにこのような色がついているわけではない(参考文献1,2)より転載)

Point

  • オミクロン株対応のワクチン接種が進んでいる。
  • 岡山大学が、新型コロナウイルスワクチン(モデルナ社オミクロン株対応2価ワクチン)の追加接種(4回目接種)後の副反応の頻度を評価する調査を実施した。
  • 3回目接種後の副反応と比較して、4回目接種後の「局所反応」、「全身反応」ともに、副反応の出現の割合は減少していた。また、30代以降では、20代までと比較して発熱割合が低い結果となった。
  • 回答した過半数の人が、主観として3回目接種と比較して副反応が軽かったと答えた。
おことわり

 本号では、現在流行している「新型コロナウイルス」について取り上げます。執筆時点(2023年2月2日)で判明している点を記載していますが、今後の研究および情勢などで執筆内容との齟齬、あるいは新たな点が明確となる可能性がおおいにあります。その点を考慮して、本号をお読みください。

はじめに

 本シリーズでは、2020年の4月号から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と、それが引き起こす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に対応し、さまざまな情報をお届けしてきました。冬の到来を受け、インフルエンザとの同時流行や感染法上の分類を5類に引き下げるなどの動きがあります。とくに感染法上の点は、私たちの生活などにも影響しますので、情報が固まり次第、本シリーズでも取り上げたいと思います。
 本号では、筆者の所属機関の1つである岡山大学で実施された、「新型コロナウイルスワクチン(モデルナ社オミクロン株対応2価ワクチン)の追加接種(4回目接種)後の副反応の頻度を評価する調査研究」3)について、紹介します。。

調査概要

 岡山大学の疫学・衛生学分野(頼藤貴志教授)らは、同大学で実施された大学拠点接種において4回目接種を受けた、岡山大学に所属する教職員および学生らに対して、モデルナ社製新型コロナウイルスワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン)追加接種(4回目接種)後の副反応について、以前に大学拠点接種において実施した武田/モデルナ社製ワクチン3回目接種後副反応調査との比較を行いました。
 調査はGoogle Formsによって行われ、2022年11月8日~2023年1月8日の間に実施。955人からの回答(回答割合:約43.4%)を得ました。そのなかで「5回目接種」と回答した33名を除いた922人(男性49.3%、女性50.3%、その他0.3%/学生58.9%、教員18.2%、職員22.9%)が調査対象となります。

調査結果

 まず接種後の副反応については、武田/モデルナ社製ワクチン3回目接種後副反応調査と比較して、「局所反応」、「全身反応」ともに副反応の出現割合は減少していました(表1)。

表❶ おもな副作用 (参考文献3)より引用改変)

1.発熱

 とくに発熱は、3回目接種後の37.5℃以上の発熱経験者が67.5%でしたが、4回目接種後は44.9%と低下していました。また、接種3日目以降も発熱が持続する人は少数でした。なお、年齢別の比較においては、30代以降では、20代までと比較して発熱の割合が低い結果となりました。加えて、4回目接種後の最高体温の質問では、「発熱なし」が54.0%、「37.5~38.0℃」が22.1%、「38.0~39.0℃」が16.8%、「39.0~40.0℃」が3.4%、「40.0℃以上」が0.5%、「未測定・無回答」が3.2%でした。

2.副反応の強さと治まる日数

 4回目接種後の副反応の強さを主観で回答した結果、3回目接種後と比較して各局所反応・各全身反応すべてにおいて、「軽かった」という回答が「重かった」という回答より多い結果でした。副反応の症状が治まる日数としては、どの症状も「接種翌日」が多い結果となりました。

3.接種部位の痛みや発熱とアレルギー・基礎疾患

 男女別では、「接種部位の痛み」について、男性は84.2%、女性は93.3%と、女性のほうが男性と比べてやや高い傾向がありました。
 アレルギー歴別では、「接種部位の痛み」は、アレルギー歴なしが87.1%、アレルギー歴ありが91.3%。「37.5℃以上の発熱」は、アレルギー歴なしが42.7%、アレルギー歴ありが48.3%となっており、アレルギー歴の有無によっての差はみられませんでした。
 基礎疾患別では、「接種部位の痛み」は、基礎疾患なしが89.5%、基礎疾患ありが81.8%と差はないものの、「37.5℃以上の発熱」は、基礎疾患なしが46.2%、基礎疾患ありが31.2%と、基礎疾患ありのグループのほうが、発熱の回答が少ない傾向にありました。

4.4回目の接種を受けることを決めた理由

 4回目の接種を受けることを決めた理由としては、「自分の感染を防ぐため」(78.8%)の回答が最も多い結果となりました。続いて、「自分が感染した際の重症化を防ぐため」(76.3%)、「家族や友人など身近の人たちへ感染を広げないため」(69.8%)、「大学で接種できるから」(66.7%)などの回答が多くみられました(図1)。


図❶ 4回目の接種を受けることを決めた理由(複数回答)(参考文献3)より引用改変)

おわりに

 今回は、岡山大学による新型コロナウイルスワクチン4回目接種と3回目接種の副反応を比較した調査について紹介しました。
 質問事項のなかに、「接種可能な人であれば、あなたは自身の身近な人に4回目接種を勧めますか」というものがあり、「勧める」が45.1%、「どちらとも言えない」が40.8%、「ワクチンの種類によっては勧める」が9.2%、「勧めない」が4.9%の順でした。これらの結果から、「勧める」とした回答が多かったのは、前述の「自分の感染を防ぐため」、「自分が感染した際の重症化を防ぐため」、「家族や友人など身近の人たちへ感染を広げないため」などの理由からだと思われます。
 ただ、以前から言われているように、接種は強要されるものではありません。今回の調査でも、「ワクチン接種を強要されたことはありますか?」という問いには、「ない」が93.9%と大半でしたが、「ある」も1.6%の回答がありました。また、「どちらとも言えない」は4.4%でした。
 成人において、ワクチンを受けるか受けないかは自身が決めることです。今回の調査は、一般の方へ正確な情報提供を行うことを目的に実施されていますので、本調査から接種を強要するのではなく、接種判断の1つの資料として扱っていただければと思います。

参考文献


1)Centers for Disease Control and Prevention(CDC): Public Health Image Library, ID#23312, 2020.
2)CDC: Public Health Image Library, ID#23354, 2020.
3)岡山大学医学部疫学・衛生学分野:新型コロナウイルスワクチン モデルナ社オミクロン株対応2価ワクチン追加接種(4回目接種)後副反応調査(2022年11月8日~2023年1月8日調査回答分)
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1041.html

(参考文献のURLは2023年2月2日最終アクセス)

https://www.dental-diamond.co.jp/item/1114