刊行にあたって：低侵襲・低コスト・省時間を実現する　バシロジックエンドファイルシステム入門｜本のエッセンス

刊行にあたって

　2018年11月７日、都内の研修室でHenrique Bassi先生のレクチャーを株式会社ビーエスエーサクライのスタッフと一緒に受けていた。歯科医師は私１人だけ、通訳の説明を受けながらBassi先生のスライドに魅了されていた。
　「日本で発売予定のNi-Ti製ファイルがあり、開発者の歯科医師がブラジルから来日するので会ってみませんか？」と誘われて新潟からノコノコ参加した。なぜ私を誘ったのか？　どうして私１人だけだったのか？　深くは考えず、「当時使用していたファイルよりも安くて性能がよければ使いたい」くらいの認識だったと記憶している。実際の講義を聞いてもファイルのよさやコンセプトが理解できず（英語の読解力の問題？）、Bassi先生が強度の彎曲根管に綺麗な根管充塡をされており、海外のエンド専門医の実力を目の当たりにして驚いた。そして、実際のハンズオン（透明根管模型を使用しての拡大形成）では、自分でもびっくりするくらいたくさんのファイルを破折させてしまった。
　エンド処置では少なからず自信があり、そのシークエンスも確立していた自分にとって、「このファイルは私の臨床では使えない」と口には出さずとも、そう判断していた。レクチャーが終わり、銀座で接待を兼ねた会食があり、誘われたのでホイホイとついていった。お酒を飲んで気が緩んだのか、Bassi先生に「今日のレクチャーだけでは到底理解できない。私をブラジルに連れていってきちんと教えてほしい」と偉そうなことを言ったら、「OK！　待っているよ！」というようなことを言ってくれた。そのときはリップサービスくらいにしか思わず、銀座で接待されたことを嬉しく思いながら新潟に帰った。
　半年後、私は日本から42時間かかるブラジルのBassi先生のオフィスに、愛知県の月星太介先生とともにいた。ゴールデンウィークを利用しての渡伯で、朝から晩までの講義と実習、工場では生産工程や開発の話を聞き、そしてBassi先生のオフィスでの治療の見学と、超濃密な４日間を過ごした。
日本であれだけ折ったファイルも、そのコンセプトや取り扱い方、クセなどを理解すると、どんな根管でも折らなくなり、圧倒的なスピードで拡大形成を終わらせることができた。
　充実した連休をブラジルで過ごし、素晴らしい思い出を胸に帰国。東京で通訳兼コーディネーターのM氏、月星太介先生、株式会社ビーエスエーサクライの社長と慰労会を行い、その席で私の東日本でのセミナー講師の契約が決まり、現在に至る。延べ1,000人以上のセミナー受講者がおり、現在も増え続けているのはバシロジックエンドファイルシステムの性能だけではなく、多くの協力者、講師の月星太介先生、坂本 渉先生のお陰だと思っている。
　バシロジックファイルが歯内療法に悩む日本の臨床家にとって第一選択となり、本書がバシロジックエンドファイルシステムの導入テキストとしてご活用いただけることを願っている。

2024年４月
執筆者代表　佐久間利喜

CONTENTS