本のエッセンス|はじめに:咬合・補綴の臨床マスター 歯科ほどよい仕事はない

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『咬合・補綴の臨床マスター 歯科ほどよい仕事はない』です。

はじめに

 筆者の歯科医師歴は45年、開業歴は37年になる。そのなかで気づいたことがある。
歯科医院の成功とは、患者からの信用の獲得と患者との信頼関係の長期継続であること。補綴、矯正、審美、歯周、歯内、インプラントなど、どれほど新しくよい治療法であっても、患者さんが歯科医師を信頼してくれないかぎり、受け入れられることはない。つまり、信用がいちばん大切だということだ。
 歯科医師は決して楽な職業ではない(図1)。負債の返済、医療過誤への配慮、保険医療の制約、増加する税金、そしてスタッフと患者に関する歯科医院のマネジメントなど、日々のストレスが存在する。ここに来て、経済の低迷も続いている。
 さらに、2020年以降はコロナ禍が追い討ちを掛けてきた。ふと気づいたら、自分は高齢者、俗にいう年寄りになっていた。しかし、そのような状況でも現在の歯科医院をさほど浮き沈みなく続けていけるのはなぜなのかと自問してみる。2019年U.S.News & World Reportは、米国における最もよい仕事10傑の4位にDentistが選ばれたと報告している。なぜなのか(図2)。
 本書は筆者の経験をもとに、これからの日本の歯科医療を背負って行く若い先生
方に少しでも役立てたらという思いで書き綴ってみた。

2023年3月
岩田健男

図❶ 歯科医師は決して楽な職業ではない。年を経るごとに体力は落ちるし、ストレスによる老化も蓄積する。
70歳になって、視力と気力がガックリと落ちた。精密な仕事に陰りがみえ、同時に歯科医師としての先もみえ、リタイアを考え出した。そして、あきらめの境地に辿り着いたら、患者にもスタッフにもおおらかな自分がいた。 「一生懸命やって10年。少しうまくなったと思って、また10年。もう10年やったら、下手なことがわかった。40年以上やったらもう何が何だかわからなくなるのだろうか?」

図❷ それでもやっぱり、歯科ほどよい仕事はない。なぜなのか(米国2019年版最もよい仕事10傑,U. S.News &World Reportより引用改変)

CONTENTS

著者略歴

岩田健男(いわた たけお)

1950年 京都府生まれ
1976年 大阪歯科大学卒業(歯科医師 DDS)
1980年 米国州立インディアナ大学歯学部大学院補綴科卒業(臨床系歯学博士 MSD)
1984年 東京都小金井市開業
1999年 新潟大学歯学部学位(歯学博士 DDSc)
     デンタルヘルス アソシエート代表


所属学会

AMERICAN ACADEMY OF FIXED PROSTHODONTICS(AAFP)
AMERICAN ACADEMY OF RESTORATIVE DENTISTRY(AARD)
AMERICAN COLLEGE OF PROSTHODONTISTS(ACP)
INTERNATIONAL ACADEMY OF GNATHOLOGY(IAG)
日本歯科補綴学会
日本顎咬合学会
日本デジタル歯科学会


主な著書

『前歯の審美補綴』(クインテッセンス出版 1984年)
『パメヤーの歯冠補綴学〈訳本〉』(イワタ オッセオインテグレーション研究所 1992年)
『審美歯科-臨床基本テクニック〈上・下巻〉』(クインテッセンス出版 1994年)
『シーシェの審美歯科〈訳本〉』(クインテッセンス出版 1995年)
『日常臨床のためのオクルージョン』(クインテッセンス出版 2002年)
『増補改訂版 日常臨床のためのオクルージョン』(クインテッセンス出版 2008年)
『増患増収の予防歯科医院づくり』(クインテッセンス出版 2008年)
『支台歯形成のベーシックテクニック』(デンタルダイヤモンド社 2011年)
『必ず上達 支台歯形成』(クインテッセンス出版 2015年)


主な役職

医療法人社団健歯会 理事
日本顎咬合学会 元理事長
米国歯科大学院同窓会 元会長