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『ちかくにあるいのち図鑑 ブタ』
書店でこの絵本に手を伸ばしたのは、表紙に描かれたブタの「つぶらな瞳」に惹かれたからです。しかし、筆者の予想に反して絵が可愛いだけの絵本ではありませんでした。扉と目次を除く69ページのすべてで、ブタの種類や習性・歴史などから豚肉料理や人間とのかかわりまで、とにかくブタに関するあれこれが、余すところなく紹介されているのです。今回は、そんな読むブタ図鑑ともいえる『ちかくにあるいのち図鑑 ブタ』をご紹介します。
タイトルには図鑑とありますが、いわゆる学習図鑑とは違い、ブタについてのさまざまな事柄が、愛らしい絵とともにコラム形式で展開されています。しかも、そのコラムの内容がとびきりユニークです。たとえば、「ブタはウサイン・ボルトよりも速く走る」や「人間の2,000倍の嗅覚をもち、トリュフや地雷、禁止薬物などを探し当てる動物として活躍している」といった科学的事例から、「トビーと呼ばれた賢者のブタ(!?)は、読み・書き・計算ができた」というにわかには信じがたい内容まで採り上げられています。読めば誰かに話したくなる……そんなブタの豆知識の数々は、子どもから大人まで年齢を問わず楽しめます。
コラム形式を活かして、自分の興味のある項目を拾い読みしてもよし、逆に最初のページから時間をかけて読み込むもよし。どちらの読み方でもブタ博士になれそうです。また、本書は、1つのテーマを1つのコラムで完結させる構成なので、待ち時間に合わせて読者自身が読むページをコントロールでき、待合室の絵本に向いているといえるでしょう。
さらに、他では見られない内容として、ブタの歯について詳しい解説があり、多様な歯の形や、人間の犬歯に当たる「牙」の独特な仕組みや働きなどを知ることができます。歯科医院に好適な絵本ですね。
読めば読むほど、ブタを身近に感じられる絵本。ブタに会いたくなりますが、動物園では家畜を飼育していないそうです。残念!
大橋悦子 Etsuko OHASHI
JPIC 読書アドバイザー
歯科衛生士向け季刊誌『DHstyle 2024年夏号』より、歯科医院の待合室にぴったりの素敵な絵本をご紹介いたします。今回は、『ちかくにあるいのち図鑑 ブタ』です。