- 患者指導を行っても、話を聞いてくれなかったり、行動変容に繫がらなかったりすることが多く、困っています。コミュニケーションのコツはありますか。 山形県・N歯科
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患者指導で困る場面は多いものです。筆者も、そのような方にどのように接したらよいのかと困ることがありました。答えを導き出すために、心理学や脳科学を学び、試行錯誤しています。なかでも、臨床で役に立っている考えのひとつ、「判断基準」についてお伝えします。
1.人がやる気になるきっかけは2通り
人は何をきっかけにやる気になるのでしょうか。人のモチベーションがどこから生まれるのかは、それぞれ異なります。相手のやる気の出どころを知り、どのような言葉をかけるかで、モチベーションが上がるか、あるいは下げてしまうのか、大きな違いが出てきます。ここで、押さえておきたいのは「判断基準」です。
人が何かを決めたり行動を選択するとき、人それぞれの判断基準をもとにします。物事を判断する際の基準には大きく分けて2つ、「内的基準」と「外的基準」があります。「判断する基準がその人のなかにあるか、外にあるか」のどちらかということです。
内的基準は、自分自身の価値観や信念をもとに判断します。外的基準は、他者の意見や周りの情報をもとに判断します。簡単にいうと、「自分の考えで決めたい」か「人の意見を聞いて決めたい」かの違いです。それぞれの基準をもう少し詳しく解説します。
2.内的基準と外的基準
内的基準が強い方は、自分の内側にやる気の源泉をもっています。自分のなかにあきらかな判断の基準があるため、人からの意見に大きく左右されることなく、「自分がどのように思うか、どうしたいか」で決断します。自分で判断する材料として、周りから積極的に情報を集めようとしますが、人の意見や指示は受け入れ難いという特徴があります。
外的基準が強い方は、周りの人の意見や指示でやる気になります。自分だけでは判断できないため、人からの意見を必要とします。
たとえば「私にはわからないので、お任せします」「おっしゃるとおりにやってみます」など、人の指示に従いたい言葉を発することも多いです。内的基準、外的基準の人には、それぞれ表1に示すような言葉が響きます。
もうおわかりだと思いますが、指導の際、こちらの話を聞こうとしない態度を示すのは、内的基準が強い方です。他人の意見にバリアを張ったような状態なので、対応に戸惑うことも多いかと思います。それでは、どのような対応が効果的なのでしょうか。
3.伝える言葉を工夫する
内的基準が強い方のモチベーションを上げたいとき、押さえておきたいポイント1つ目は「相手の意見を尊重する」ということです。自分の意見が尊重されることで、やる気が高まります。「あなたが決めてよいですよ」と伝えることで、相手は選択の自由があると感じることができ、こちらの話を1つの参考情報として、聞いてくれるようになります。
効果的な例を2つ挙げます。
・いまのご自身のやり方に、ぜひ加えていただきたい方法があるのですが、……
・ご参考までにさらに効果的な磨き方をお伝えします。
2つ目のポイントは、「提案する」ことです。人から指示をされたり、自分の行動を他人に決められることには強く反発します。よって、気をつけたいのは「こうしてください」、「すべきです」といった指示や命令と思わせる言葉です。この命令口調では、まったく聞いてもらえません。その代わり「提案する」言葉を使うと、受け入れてもらいやすくなります。
具体的には以下のようなフレーズです。
・いつもの磨き方に、取り入れてみてはどうでしょうか。
・この磨き方を加えると〇〇さんの状態がよりよくなるかもしれません。
このようなフレーズをいくつか指導の際に散りばめて伝えていくと、これまで聞く耳をもってくれなかった患者さんにも「ちょっと聞いてみようかな」と、よい反応が得られます。
ぜひお試しいただき、患者さんの反応の変化を感じてみてはいかがでしょうか。柴原由美子
長崎県・柴原歯科医院

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