『女王さまのワードローブ
イギリス国民に愛されつづける女王エリザベスの物語』
6月2日から4日間、イギリスのエリザベス女王の今年の公式誕生日として祝賀イベントが催されます。実際にお生まれになったのは1926年4月21日とのことで、年に2回誕生日を祝うのは、6月がもっとも気候に恵まれるイギリス特有の慣行だそうです。
そこで今月は、女王が生まれてからの90年を超える年月を縦糸に、また、その間の女王の服装を横糸に織りなして、その人生を描き出した絵本『女王さまのワードローブ イギリス国民に愛されつづける女王エリザベスの物語』をご紹介します。
ベビードレスや戴冠式のドレスなど、盛装となるどのドレスも華麗で気品溢れるものばかりで、見る者のため息を誘います。ですが読者は、ページを進めるにつれて「それらは、どれほど豪華なドレスや装飾品であっても、女王にとっては仕事着なのだ」ということに気づかされます。
公務で女王がいつも明るい色を着るのは、決して大柄ではない女王が、人混みのなかでも自身を見つけやすくするためだと書かれています。
顔がよく見えるように、帽子のつばの大きさにまで気を配るそうです。そう知ってから改めて女王の服装を見ると、国民との関係をとても大切にしていることが伺われて、温かな気持ちになります。また、公務以外の、あまり知られていない装いにも言及しています。たとえば戦時中には、国のためにとツナギを着て車の整備やタイヤ交換の作業に従事しました。
時には、真っ赤なスカーフを被り、愛車のレンジローバーを乗りまわしたという、活発な一面も描かれています。大人には、働く女性を描いたお洒落な絵本としても気に入っていただけるでしょう。
子ども向けとしては、文章が長く読み聞かせには一苦労ですが、ファッションに興味のある子どもなら、大人と一緒にイラストを見るだけでも十分楽しめます。
金箔を施した表紙にも凛とした気品がありますので、可能であれば、待合室でも表紙が見えるように置くことをお勧めします。あらゆる年代のおしゃれ好きに人気の1冊になることでしょう。
おひさま堂 書籍部
大橋悦子
歯科衛生士向け月刊誌『DHstyle』より、歯科医院の待合室にぴったりの素敵な絵本をご紹介いたします。