- 院内が物で溢れていて、どこに何があるかわかりづらく、見た目もよくありません。どのようなコンセプトで、院内を整理・整頓すればよいでしょうか。また、効率よく収納できるコツを教えてください。 香川県・T歯科医院
-
歯科医院は他業種に比べ、「職場の片づけ=仕組み作り」が非常に難しい状況にあります。
① 扱う物が細かく、種類が多い
② 新しい物が次々に導入される
③ 開院時、十分な収納スペースを確保しづらい
④ 滅菌消毒室に物と事が集中しすぎている以上の点から、まずは一括りに片づけができる・できないだけの問題ではないことを理解しましょう。
この難題をクリアし、効率的なオペレーションと見た目の改善を実現させるためには、まず1年程度の環境整備プロジェクトを立ち上げてください。「今年は院内の環境整備に取り組む」という目標を立て、環境整備リーダーを任命し、スタッフ全員を巻き込み、業務として勤務時間内に行うなどのポイントを押さえます。
スタート時には、スタッフ全員で片づけの手順を共有します。組織で行う片づけは、それぞれの経験や価値観で進めると、必ずトラブルになります。最近では、学校で雑巾を絞らないので、絞り方を知らない世代が診療の第一線にやってきます。そのため、職場の環境整備はより困難になります。教わっていないことはできないのは当然ですから、しっかりと教える必要があります。
歯科医院の片づけは、院内の空間をチェアー・滅菌・技工・受付・バックヤード(在庫室)等、空間を明確に分け、そこで使う物を過不足なく揃え、それぞれの空間に再分配することです。「片づけ=捨てる」という概念が存在しますが、考えるべきことは、捨てる物のことではなく、日々の診療に必要な物です。また、院内の物は医院の資産です。そのため、スタッフが勝手に捨てることはできません。経営者もしくは権限移譲した幹部スタッフが判断すべきでしょう。
「スタッフに業務に使う物だけを揃えてください」と指示をすると、驚くほど物が減ります。滅菌室や、ケア用のチェアーなどがわかりやすくその傾向が出ます。そして、必要な物を選んだら、カテゴリーごとに、一番よく使う物から順に、取り出しやすい位置に、①物を重ねず、②定方向に並べ、③空間の8割を目処に「仮収納」をします。
仮収納とは、使ってみて不具合があれば修正をする間の、仮の収納期間のことです。この期間に散らからなかったら、それが適切な場所と収納方法と判断します。それまでは、物が混ざらないように院内にある収納用品を再利用しましょう。こうして丁寧に収納場所を作ることで、医院独自のオーダーメイドの仕組みができあがります。収納用品の入れ替えは、仮収納期間が終わってからで十分です。
そして、捨てられない、判断に迷う物は、いったん診療エリアから離れた場所に収納します。使われない物により院内の空間が埋められ、人の動きを阻むのは大きな損失となります。
最後に、定着に向けてのステップです。人や物の入れ替わりで再び散らからないようにするためには、職場地図を作成し、定物定位チェックを導入します。職場地図は収納場所を撮影し、入っている物を記載しておきます。定物定位とは、決められた物を決められた場所に戻すことです。日々の診療で、ある程度乱れるのは仕方がありません。それを、職場地図を見ながら定期的に元に戻すことで、きれいな状態を維持できます。また、別部署のスタッフがローテーションで実施することで、全員がどこに何があるか把握できるようにもなります(図1)。日々、元に戻そうという意識が生まれる最大のメリットがあります。スタート直後は時間もかかりますし、物が元に戻っていない、余計な物が入っていることに驚くと思います。しかし、チェックしなければ、そのまま放置され、あっという間に元に戻ります。
環境整備は院内に仕組みを担保することです。片づけから始める医院の効率化に、ぜひ挑戦してみてください。田中明子
●幸せ収納デザイン株式会社
▽月刊デンタルダイヤモンドのバックナンバーはこちら▽
https://www.dental-diamond.co.jp/list/103
▽Q&Aのバックナンバーはこちら▽
https://dental-diamond.jp/qanda.html
学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2024年6月号より「心地よい職場環境を生む院内の収納・片づけ術」についてです。