Dd診断力てすと『臼後部歯肉の腫瘤』デンタルダイヤモンド 2019年06月号

長谷剛志 Takashi HASE
公立能登総合病院 歯科口腔外科
〒926-0816 石川県七尾市藤橋町ア部6-4番地


図❶ 初診時の口腔内写真。右臼後部歯肉に
拇指頭大で弾性軟の腫瘤が認められた

図❷ 初診時のパノラマX線写真。パノラマX線所見では顎骨病変を示唆する所見は認められなかった


患者:74歳、女性
主訴:口の中にできものがあり、徐々に大きくなっている気がする。
現病歴:感冒症状がみられ、かかりつけ内科を受診した。そこで口腔内を診査したところ、右臼後部歯肉の粘膜に腫瘤を指摘され、精査および加療目的のため当科に紹介受診となった。同部の腫瘤は15年ほど前より自覚していたが、無痛性のため放置していたという。
家族歴:特記事項なし
既往歴:高血圧、高脂血症
現症:感冒症状が治まり約2週間経過したところで、当院受診となった。体格はやせ型であるが、栄養状態は問題なかった。体温は36.2℃で、軽度の全身倦怠感が認められた。右臼後部歯肉より上下歯列咬合線上部に拇指頭大の有茎性腫瘤が存在した。被覆粘膜は正常粘膜に比べ、やや蒼白味を帯びていた。触診すると、表面は平滑、境界は明瞭でこんにゃくのように弾力性があり、波動、偽波動、圧縮性は認められなかった(図❶)。
また、食事中に誤って噛んでしまうことが多く、一部咬傷痕が認められた。顔貌には変化なく、所属リンパ節にも異常は認められなかった。開口障害、嚥下困難はみられず、口唇をはじめ他の粘膜に器質的変化はなかった。
血液検査所見:特記すべき所見なし
X線所見:パノラマX線所見では、腫瘤が存在する周囲歯槽骨の吸収は著明ではなく、顎骨病変を示唆する所見も認められなかった(図❷)。

Q 最も疑われる疾患名は?

① 骨隆起
歯肉がん
③ 智歯周囲炎

歯肉線維腫