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TopQ&A歯科一般 >高齢者へのホワイトニングにおける注意点 (2022年5月号)
Q&A
歯科一般 (2022年5月号)
Q 高齢者へのホワイトニングにおける注意点
●最近、高齢者にホワイトニングを行う機会が増えているように感じます。治療に際して気をつけるべきことはありますか。
──群馬県・R歯科医院
A
文豪、谷崎潤一郎の随筆に、「老人なぞは、(歯が)煙草のやにで黄色く汚れて、手擦れのした象牙のような色をしているのが、白毛交りの疎髯(そぜん)の隙から見えたりするといかにも老人らしく(以下、略)」とあります1)。これが書かれた昭和5年(1930年)から時代は移ろい、現在では高齢者の歯の色に対して、このような考えは支持されていません。
 より安全で効果的な材料と技法の開発により、ホワイトニングのニーズは高まってきました。このニーズは若年層、中年層に多かったのですが、最近では高齢者にも求められてきているように感じられます。高齢者へのホワイトニングも、基本的には若年層、中年層への処置と同じです。しかし、気をつけなければならない点がいくつかあります。
1.高齢者の歯の色
 高齢者の歯のほうが若年者よりもホワイトニングの効果が低いという、抜去歯を用いた研究があります2)。加齢によって歯の明度は低下するとされていますが、高齢者の歯は象牙細管が結晶によって封鎖され、透明象牙質ができるのも一因です3)。また、高齢者のエナメル質は摩耗によって薄くなり、黄色の象牙質が透けて明度が低下していることもあります(図1)。したがって、高齢者の歯は明度が低いことが多く、一定の白さにするのは若年者に比べて困難なこともあります。
2.オフィスホワイトニングかホームホワイトニングかの選択
 患者自身が、シリンジからホワイトニング材をカスタムトレーに注入し、それを装着するホームホワイトニングは、若年者にとっては容易な操作です。一方で、目や手が少し不自由になってきた高齢者にとっては、難しい作業となることがあります。そのような場合は、患者が自身で処置を行わないオフィスホワイトニングを選択したほうがよいでしょう。
3.高齢者にオフィスホワイトニングを行うときの留意点
 オフィスホワイトニングでは、ホワイトニング材の塗布、光照射、除去に15〜20分程度かかります。この処置を3回続けて行うと、約1時間を要します。1時間、同じ姿勢でいるのは高齢者にとって苦痛を感じることもありますので、処置時間や処置回数を減らすことが必要な場合もあります。

図1 高齢者(70代、男性)の歯。ホワイトニングを希望して来院した
図1 高齢者(70代、男性)の歯。ホワイトニングを希望して来院した

図2 オパールエッセンスGo。既成のトレーにホワイトニング材があらかじめ充填されている
図2 オパールエッセンスGo。既成のトレーにホワイトニング材があらかじめ充填されている

4.高齢者のホワイトニング─もう1つの選択肢
 昨年、既成のトレーにホワイトニング材を封入したホームホワイトニング材「オパールエッセンスGo」(ULTRADENT JAPAN)が発売されました(図2)。これは、患者自身でトレーにホワイトニング材を注入する必要がありません。自分で既成トレーを歯列に装着できれば、高齢者のホームホワイトニングにオパールエッセンスGoが適しています。
 高齢の患者が、歯のホワイトニングに際して、「私のような年寄りが……」、「もう歳ですから……」といった謙虚な表現をされることがありますが、決して肯定してはいけません。高齢者の歯と身体の特徴を理解し、白い歯を提供していただけたらと思います。


【参考文献】
  1. 1)谷崎潤一郎:懶惰の説.陰影礼賛(改版23刷).中央公論新社,東京,2012:66-91.
  2. 2)丸山敬生,韓 臨麟,興地隆史,岩久正明:生活歯の漂白に関する研究:エナメル質の微細構造と耐酸性の変化およびフッ化物塗布の影響.日歯保存誌,50:256-265,2007.
  3. 3)日本歯科色彩学会(編著):歯の色の話.クインテッセンス出版,東京,1999.

大槻昌幸
東京医科歯科大学大学院 う蝕制御学分野

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