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TopQ&A法律 > 掲示物への手描きキャラクターの使用は違法か?(2021年2月号)
Q&A
法律(2021年2月号)
Q掲示物への手描きキャラクターの使用は違法か?
●当院は小児の患者さんが多いです。そこで、子どもを安心させるため、漫画やアニメのキャラクターの絵を描いて診療室に飾ろうかと考えています。法的に問題はありますか?
── 高知県・O歯科医院
A
法的に問題となり得るのは、著作権と商標権との関係です。

1.著作権
著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」をいいます(著作権法第2条第1項第1号)。
 また、キャラクターとは一般に、文字や映像などの表現を介して読者や視聴者に観念される抽象的イメージをいいます。
 キャラクターの外見や性格などに作成者の思想や感情が込められていたとしても、それが具体的な形で表現されているとはいえないのが通常です。そのため、キャラクター自体は「表現」の要件を欠き、著作物ではないとされていますので、キャラクター自体に著作権はありません。もっとも、キャラクターを漫画、アニメ、小説、映画、ポスターまたはゲームなどにおいて具体的な形で表現すれば、「表現」の要件を満たしますので、著作物性が認められます。
 このように、キャラクターの登場するアニメや漫画には著作権がありますので、これを侵害しないように配慮する必要があります。
 著作権の内容として、複製権(著作物をコピーする権利)や翻案権(著作物に変更を加えて新たな著作物を生み出す権利)があります。そのため、著作権者の許諾を得ずに複製や翻案することは、著作権の侵害となります。
 たとえば、漫画に描かれたキャラクターをコピーすること、アニメに映ったキャラクターをプリントアウトすること、またはこれらを手描きでトレースすることは複製に該当しますので、これらのトレースしたものなどを著作権者に無断で診療所内に飾ると複製権の侵害となります。トレースなどではなく、キャラクターを参考に真似して手描きした場合、複製権は侵害しない可能性はありますが、翻案権を侵害する可能性があります。
 いずれにせよ、手描きのキャラクターを診療所内に飾る行為は、著作権を侵害する可能性が高い行為です。著作権者が問題視しない結果、事実上は何ら問題が生じないと思われますが、法的には違法といわざるを得ません。
 もっとも、複製権ないし翻案権の侵害と評価されるのは、同一性・類似性が認められる場合に限ります。同一性・類似性の判断は、判例上、「表現上の本質的な特徴を直接感得することができるか否か」が基準とされています。そのため、キャラクターの絵で子どもを安心させるという目的に合致しているのか疑問ではありますが、キャラクターを参考にしながらも、同一性・類似性が認められないほど(すなわち、子どもが見ても当該キャラクターであると認識できないほど)似ていない絵を描いた場合、それを飾っても著作権の侵害にはなりません。

2.商標権
 商標権は、著作権のように著作物の創作によって当然に発生するのではなく、登録によって発生します。そのため、診療所内に飾ろうとするキャラクターの特定のパターン(構図)が商標登録されていない場合、または登録されていても登録の商品・役務と同一または類似の商品・役務で使用しない場合は、商標権を侵害しません。ちなみに、商標登録の有無・内容は、特許庁の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で確認可能です。
 なお、商標の場合、キャラクターだけでなくキャラクターの名称が登録されている場合がありますので、名称の使用にも注意が必要です。

井上雅弘
銀座誠和法律事務所

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