アーリーステップサージェリーの特徴とは
●アーリーステップサージェリーという手法があることを耳にしました。その特徴について教えてください。
──滋賀県・Yデンタルクリニック
顎変形症に対する主訴の改善には、大方の症例で矯正歯科と外科とのチームアプローチが必要となり、1997年から健康保険の適用も受けています。通常は術前矯正治療を終えてから手術を施行し、術後矯正治療、保定へと進む一連の過程を経て行われています。
術前矯正治療を完了する意味は、手術計画を正しく立てやすくし、術後咬合の安定を確実なものとします。とくに術後咬合の安定は、目標とした骨格形態となるように、計画的に骨切りをした部位の骨性治癒の安定に繋がるものとして重要視されます。
近年、骨固定用デバイスの進化が目覚ましく、術後間もないころから開口が可能となり、普通食への移行も早まっています。このような骨固定用デバイスの進化は、術後咬合に多少の不安定さが懸念される術前矯正治療の段階にあっても、手術に踏み切れる状況を作り出し、こうしたアプローチをとる施設・症例が出てきました。これを 「サージェリーファースト」と呼んでいます。。
しかしながら、これ以外にも「オルソグナティックサージェリー・ウィズ・ミニマルオルソドンティックプレパレーション」や「ミニマル・プレサージカルオルソドンティックス」など、いくつかのアプローチが生まれてきました。真に言語的に考えれば、サージェリーファーストとは、術前矯正治療をまったくなしで手術を行うということです。
しかし、実際にサージェリーファーストアプローチを行っている術者でも、術前矯正治療をせずに手術に入るケースは少ないようです。さらに、術前矯正治療をまったくしないと健康保険の適応対象外となるので、おのずと顎矯正手術自体も健康保険の適応対象外となります。
こうした現状を踏まえ、術前顎矯正治療のどの段階で手術をするのか、ある程度はっきりさせる用語が必要と考えます。健康保険では、矯正治療のステップを「I:レベリング、II:犬歯遠心移動、III:スペースクローズ、IV:ディテーリング」と、おおむね4段階に分けています。術前顎矯正治療の意味を考えれば、ステップIVを経て顎矯正手術に入るのが従来からの流れです。
これに対し、ステップの早い段階で顎矯正手術に入るアプローチを「アーリーステップサージェリー」と呼ぶことにしました。実際、アーリーステップサージェリーで行うことにより、治療期間の短縮や手術日選択の自由度の向上、術前矯正治療による一時的な顔貌醜悪化の抑止が図られます。さらに、健康保険によってステップごとの治療回数を減らすことで、医療費の抑制の可能性などが期待されます。
また、アーリーステップサージェリーは、従来のアプローチとは異なる点がいくつかあります。術後咬合が安定していないことから手術計画が立てにくく、治療経験・指導などが必要です。また、手術時の顎位をどこに設定してよいのか、迷うことがしばしばあり、サージカルガイドプレートは必須となります。さらに、術後にサージカルガイドプレートを外すと、軟組織の後戻り方向への牽引力と、最大咬合の接触面積を求める生理的機構が働き、咬合が安定していない状況では顎位が意図せぬ方向に偏位することがあります。しかし、この時期に骨治癒を必要とする身体的状況が歯の移動を早め(Regional Acceleratory Phenomenon)、矯正の治療期間の短縮に貢献するとされています。
このように術後管理も慎重に行う必要があり、矯正医や術者、患者のそれぞれが本アプローチを正しく理解し、取り組むことが求められます。そして一方で、患者への貢献度も高いと考えられるでしょう。
術前矯正治療を完了する意味は、手術計画を正しく立てやすくし、術後咬合の安定を確実なものとします。とくに術後咬合の安定は、目標とした骨格形態となるように、計画的に骨切りをした部位の骨性治癒の安定に繋がるものとして重要視されます。
近年、骨固定用デバイスの進化が目覚ましく、術後間もないころから開口が可能となり、普通食への移行も早まっています。このような骨固定用デバイスの進化は、術後咬合に多少の不安定さが懸念される術前矯正治療の段階にあっても、手術に踏み切れる状況を作り出し、こうしたアプローチをとる施設・症例が出てきました。これを 「サージェリーファースト」と呼んでいます。。
しかしながら、これ以外にも「オルソグナティックサージェリー・ウィズ・ミニマルオルソドンティックプレパレーション」や「ミニマル・プレサージカルオルソドンティックス」など、いくつかのアプローチが生まれてきました。真に言語的に考えれば、サージェリーファーストとは、術前矯正治療をまったくなしで手術を行うということです。
しかし、実際にサージェリーファーストアプローチを行っている術者でも、術前矯正治療をせずに手術に入るケースは少ないようです。さらに、術前矯正治療をまったくしないと健康保険の適応対象外となるので、おのずと顎矯正手術自体も健康保険の適応対象外となります。
こうした現状を踏まえ、術前顎矯正治療のどの段階で手術をするのか、ある程度はっきりさせる用語が必要と考えます。健康保険では、矯正治療のステップを「I:レベリング、II:犬歯遠心移動、III:スペースクローズ、IV:ディテーリング」と、おおむね4段階に分けています。術前顎矯正治療の意味を考えれば、ステップIVを経て顎矯正手術に入るのが従来からの流れです。
これに対し、ステップの早い段階で顎矯正手術に入るアプローチを「アーリーステップサージェリー」と呼ぶことにしました。実際、アーリーステップサージェリーで行うことにより、治療期間の短縮や手術日選択の自由度の向上、術前矯正治療による一時的な顔貌醜悪化の抑止が図られます。さらに、健康保険によってステップごとの治療回数を減らすことで、医療費の抑制の可能性などが期待されます。
また、アーリーステップサージェリーは、従来のアプローチとは異なる点がいくつかあります。術後咬合が安定していないことから手術計画が立てにくく、治療経験・指導などが必要です。また、手術時の顎位をどこに設定してよいのか、迷うことがしばしばあり、サージカルガイドプレートは必須となります。さらに、術後にサージカルガイドプレートを外すと、軟組織の後戻り方向への牽引力と、最大咬合の接触面積を求める生理的機構が働き、咬合が安定していない状況では顎位が意図せぬ方向に偏位することがあります。しかし、この時期に骨治癒を必要とする身体的状況が歯の移動を早め(Regional Acceleratory Phenomenon)、矯正の治療期間の短縮に貢献するとされています。
このように術後管理も慎重に行う必要があり、矯正医や術者、患者のそれぞれが本アプローチを正しく理解し、取り組むことが求められます。そして一方で、患者への貢献度も高いと考えられるでしょう。
村松裕之●東京都・市川矯正歯科医院