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TopQ&A法律 > 臨時休診日を有給休暇にできるか(2014年4月号)
Q&A
法律(2014年4月号)
Q 臨時休診日を有給休暇にできるか
●当院はスタッフ数も少なく、全員がすべての有給日数を使い切るのが難しい状況です。そこで、私が学会やセミナーへ出席するため臨時休診とする日に、スタッフの有給休暇を使用したことにしたいのですが、可能でしょうか。
── 千葉県・Eデンタルクリニック
A
  年次有給休暇(以下「有給休暇」といいます)とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことです。「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇です。
  有給休暇については、労働基準法39条で規定されています。その規定によれば、雇入れの日から起算した勤続期間が6ヵ月を経過し、かつ、その期間の全労働日の8割以上出勤した場合、10日の有給休暇が付与されます(ただし、パートタイム労働者等、所定労働日数が少ない労働者については、付与日数等が異なります)。以後、1年間ごとに全労働日の8割以上出勤した場合には、勤続期間に応じた日数の休暇が付与されます。
  ご質問についてですが、労働者が有給休暇を使用すること、すなわち労働者が付与された有給休暇を請求し、使用者がこれを与えることは、その日における労働者の労働義務が消滅し、同時に労働者はその日の賃金請求権を取得することを意味します。しかし、そもそも医院の臨時休診日にはスタッフに労働義務がありません。そのため、臨時休診日にスタッフの有給休暇を使用したことにすることは、労働義務を免れさせるという有給休暇の目的と矛盾しますので、できません。
  それでは、使用者としては、労働者の消化しきれない有給休暇をどのようにすべきでしょうか。
  この点については、まず第一に、スタッフが有給休暇を使用できる環境を整え、実際に消化させることが理想的であり、法律の意図するところです。もっとも、実際には難しいこともあり得ると思います。
  そこで、未消化の有給休暇を使用者が買い上げることが考えられます。しかし、有給休暇の趣旨は、前述のとおり、労働者の心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障することにあります。その実現のためには、金銭的な調整ではなく、実際に労働者を休ませなければなりません。そのため、有給休暇の買い上げを予約することや、買い上げの予約があることを理由に有給休暇の取得を認めないことは、労働基準法39条に違反するものと解釈されています(昭和30年11月30日基収4718号)。
  もっとも、結果的に未消化になってしまった有給休暇について、その日数に応じて調整的に金銭を支給することは、許されるものとされています。たとえば、有給休暇の請求権は2年間で時効により消滅しますが、消滅後の有給休暇を買い上げることは前述の有給休暇の趣旨に反しないので、可能とされています。
  また、退職予定者について、退職日時点で消化しきれず残った有給休暇を使用者が買い上げることも許されると考えられています。
  その他のケースとしては、個別の労働契約において、労働基準法に規定されている有給休暇の日数以上に独自の有給休暇を定めている場合もあります。その場合、法定日数を超過している部分であれば、買い上げることは可能と考えられています。

金田英一銀座誠和法律事務所

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