刊行にあたって：歯科と睡眠　睡眠歯科医療はじめましょう！｜本のエッセンス

刊行にあたって

　ヒトの三大欲求の１つである睡眠。生命を維持するために必須なものだが、日本人は世界一睡眠時間が短いことで知られている。
　現在、国内で睡眠に対する関心が高まっており、なかでも睡眠時無呼吸は日本に潜在患者が900万人いるといわれており、医科歯科連携において歯科でも保険診療が可能となっている。また、睡眠時ブラキシズムも筋電計による検査が歯科で保険収載され、身近な疾患となっており、日常臨床においてこれらの睡眠関連疾患を伴う患者にはかなりの頻度で遭遇するのではないだろうか。
　そのような睡眠医療に歯科がかかわることは、筆者らの大学卒業時には考えられなかった。そして、実際に睡眠の世界にかかわるようになって困ったのが、睡眠医療の書籍は専門性が高すぎるものばかりで、どれを読んでも難解であったことである。
　近年では、毎年歯科医師国家試験において睡眠歯科に関する問題が出題されており、睡眠歯科医学として発展しているが、大学においては専門講座がないのが現状であり、まだまだ学びたくても学びにくい環境にある。
　本書は、大学ではほとんど習わなかったであろう「睡眠医療」に関して、「睡眠歯科」としての歯科医療からのアプローチと、「睡眠衛生」として睡眠を取り巻く基本的な知識をなるべくわかりやすく記載した。また、歯科医院として新たに睡眠歯科に取り組む際に、スタッフの教育にも活用できる構成とした。
　経験豊富な先生方にとっては、いままで培ってきた歯科医療の視点を変えるきっかけとなり、睡眠歯科としての新たな一歩が踏み出せると思う。
　患者だけではなく、スタッフ、家族、また自身のために、「睡眠」を「歯科」に取り入れてほしい。

2024年10月
藤巻弘太郎　佐々生康宏　夫馬吉啓

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