Q&A 法律 患者に口コミを書いてもらうのはステマにあたる?|デンタルダイヤモンド 2023年12月号

Q&A 法律 患者に口コミを書いてもらうのはステマにあたる?|デンタルダイヤモンド 2023年12月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2023年12月号より「患者に口コミを書いてもらうのはステマにあたる?」についてです。

他業界では「Googleの口コミを☆4つ以上で書いていただければ、粗品をプレゼントします」と案内して、お客さんに口コミを書いてもらうことがあるそうです。当院でも実施したいと考えていますが、法律的に問題ないのでしょうか。 東京都・S歯科

 結論からいえば、令和5年10月1日以降はどの業界でも規制の対象になりましたので、「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」などといった表示を要する可能性が高いです。これらの表示がなければ違法です。
 検討されている口コミ依頼は、ステルスマーケティング(以下、ステマ)に該当し得ます。ステマとは、それが宣伝であると消費者に気づかれないように宣伝を行うことです。
 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽った表示などを規制しています。これまで、ステマは景品表示法の規制の対象外でした。しかし、インターネット広告やSNS利用者数の増加、そして世間や人の行動等に大きな影響を与えるインフルエンサーを介したマーケティングの活発化等に伴い、ステマが問題視されるようになりました。
 たとえば、企業がインフルエンサーに自社製品に関して肯定的な投稿を依頼し、インフルエンサーが依頼どおりの投稿をした場合、その投稿は実質的には企業の広告といえるにもかかわらず、それを目にした消費者には広告とは分かりません。このような行為は、以前からモラルに反するとして批判の対象でしたが、このたび、消費者保護の観点から法的規制の対象にもなり、景品表示法の規制対象にステマも含まれることとなりました。
 ステマに該当する場合、当該投稿に「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」などといった表示が必要です。また、ステマ規制に違反した場合、消費者庁や都道府県による措置命令の対象になり、措置命令に違反した場合には刑事罰の対象となります。
 ステマに該当するか否かの基準についてですが、消費者庁は「事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合」には、ステマ規制の対象になるとしています。
 そして、消費者庁の運用基準の1つとして「事業者がインフルエンサー等に依頼して、SNSや口コミサイトで自社の製品やサービスに関する表示をさせる場合」が挙げられています。ご質問にある依頼に基づく口コミは、これに該当するといえます。ましてや、粗品という経済的利益の供与も伴うことから、ステマに該当する可能性はさらに高いというべきです。そのため、お考えの方法による場合、患者さんの投稿する口コミに「広告」等と表示してもらう必要があります。これは現実的ではないでしょうから、実際としては難しく、患者さんの自由意思による口コミ投稿を期待するしかないと思います。
 なお、ご注意いただきたいのは、前述の消費者庁の運用基準は、経済的利益の供与を伴わない、単なる依頼による口コミ等の投稿であってもステマに該当するとされている点です。つまり、患者さんに粗品等を渡すことなく、「当院のよい口コミを投稿してください」などと依頼しただけでも、規制対象になる可能性があります。
 また、ステマ規制は令和5年10月1日から施行されましたが、同日以前に投稿された口コミ等も規制対象になります。そのため、もし過去に先生からの依頼に基づいて患者さんが肯定的な口コミを投稿していた場合、「広告」等と表示してもらうか、削除してもらう必要があります。

井上雅弘
銀座誠和法律事務所


デンタルダイヤモンド 2023年12月号 表紙

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