本のエッセンス|刊行にあたって:矯正治療が楽しくなる JET system 入門

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『矯正治療が楽しくなる JET system 入門』です。

刊行にあたって

 2006年、がんで余命宣告されていた青年が矯正治療にやってきた。彼が元気なうちになんとか治療を終わらせてあげたいとの強い思いから、治療期間の短縮に取り組み始めた。
 いまだに一部の矯正歯科医から、「そんなことはできるはずがない。しっかり治すには2〜3年はかかる」というコメントをいただく。それに対して議論をしても仕方がないので、JET system によって1年程度で治療を完了した症例も加えて日本矯正歯科学会の臨床指導医の審査を受けた。その結果、妻とともに提出した20症例すべてが合格し、臨床指導医として登録された。また、2022年1月には査読のある英文雑誌(『Medicina』電子版)に症例報告を行った。
 JET system で使用していた3M 社製ブラケットが2019年末に製造中止となり、その後の治療に不安があった。しかし、新たにJET system 専用ブラケットを自ら開発し、2021年11月に株式会社 松風が国内販売代理店として販売を開始して材料供給の不安は一掃されている。
 JET system に取り組むということは、これまでの矯正歯科医としての人生を否定することに等しい。映画『スター・ウォーズ』に出てくるジェダイ・マスターのヨーダは「You must unlearn what you have learned.」と言っていた。そしてルーク・スカイウォーカーのごとく、多くの矯正歯科医がいままでの常識を捨て去り、新たな技術を身につけ、新しい景色が見られるようになることを私は夢見ている。そうすれば矯正治療に対する世の中の見方も変わり、矯正治療の可能性が広がり、専門性の高さを証明することになると考えている。
 まずはChapter 1-01、02を繰り返し読み、これまでの治療との違いを理解してほしい。その後、Chapter 2-03、04の症例に取り組んでいただきたい。そのときは、現在行っている矯正治療の知識をすべて捨て去り、新たな矯正治療として取り組むことが肝要である。科学の一分野として矯正歯科も因果関係と再現性が求められる。つまり、いつ・どこで・誰が行っても同じ方法ならば同じ結果が得られる必要がある。
 さらに、矯正治療は伝統芸能ではない。現段階でも矯正治療にかかわるすべての理論が解明されているわけではなく、今後も新たな発見があり、治療法は進化し続ける。その進化をつねにキャッチアップするとともに、治療法の研究・開発に主体的にかかわることが、矯正歯科医には求められていると思う。
 この一冊から新たな景色を手にしてほしい。


2023年4月

東京都・自由が丘矯正歯科クリニック
成田信一

 

CONTENTS

【著者略歴】

成田信一(なりた しんいち)

1965年 神奈川県藤沢市生まれ
1984年 神奈川県立湘南高等学校卒業
1991年 東京医科歯科大学歯学部卒業
    同大学歯科矯正学第一講座入局
1998年 同大学大学院歯科矯正学専攻修了
    日本矯正歯科学会認定医
1999年 同大学歯科矯正学第一講座退局
1999年 自由が丘矯正歯科クリニック開設
2002年 法人化、医療法人社団スマイルデザイン設立
2008年 JET systemの臨床研究を開始
2021年 日本矯正歯科学会臨床指導医
現在  医療法人社団スマイルデザイン理事長
    自由が丘矯正歯科クリニック院長

所属学会
日本矯正歯科学会臨床指導医、アメリカ矯正歯科学会国際会員
World Federation of Orthodontist Fellow
日本顎変形症学会正会員、東京矯正歯科学会正会員
日本口蓋裂学会正会員