はじめに
平成30年度の診療報酬改訂において、「口腔機能低下症」が歯科保険病名として新設されました。
これにより加齢に伴って顕著となる口腔機能低下のサインを歯科医療機関で早期に気づき、適切に管理していくことが期待されるようになりました。
さらに令和4年度の診療報酬改定では、口腔機能低下症の適応年齢が50歳以上と引き下げられ、これまで以上に口腔機能管理への積極的なかかわりが求められることとなります。
口腔機能管理への取り組みとしては、地域における介護予防事業や、介護保険での口腔機能向上加算、摂食機能療法などがありましたが、歯科診療所で医療保険によって口腔機能低下症への対応がなされることで、シームレスな関与が可能となりました。また、「フレイル予防」、「健康寿命延伸へのかかわり」に関する歯科からの情報発信がますます重要視されることになるでしょう。
「食べる楽しみを享受すること」、「人や社会との繋がり」において、口腔機能は不可欠な存在です。患者さんのQOLを口腔保健の領域から支援する意味で、私たち歯科専門職はう蝕や歯周病、歯の欠損という器質的な問題への対応に加え、口腔機能の維持向上という、患者さんの健康を守るための新たな武器を手に入れたともいえるのではないでしょうか。
口腔機能低下症へ対応するための入門書として、歯科衛生士の立場から本書を執筆しました。本書を日々の患者さんとの口腔機能管理を通したかかわりにいかしていただけたら幸いです。
小原由紀
CONTENTS
著者プロフィール
小原由紀(おはらゆき)
1998年 東京医科歯科大学歯学部付属歯科衛生士学校 卒業
2008年 東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科 卒業
2009年 東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科 特任教授(~2011年)
2010年 首都大学東京(現・東京都立大学)大学院人間健康科学研究科修了 修士(健康科学)
2014年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了 博士(歯学)
同 年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 講師
東京都健康長寿医療センター研究所 非常勤研究員
2019年 東京都健康長寿医療センター研究所 専門副部長
本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、
おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『1からはじめる口腔機能低下症』です。