はじめに：歯科「閉院」作法　明日、院長やめます。｜本のエッセンス

はじめに

　一番好きな仕事をやめることはできますか？

　院長をやめよう……、そう考えたときに振り返るのは、歯科医院を開業してからの数十年。患者さんやさまざまな取引先との関係の中で、いいこともあれば、大変なこともあったでしょう。
　そうした中、歯科医院を何十年も続けるには、かなりのモチベーションが必要だったはずです。借入金返済のため、結婚、子育て、住宅購入の資金のためといった個人的なものだけではないでしょう。困難なことも多い中、それでも続けられたのは、歯科診療という仕事が好きだからこそではありませんか？　そうでなければ続けられません！そして、そんな仕事を簡単にはやめられませんよ！
　だから、皆さん悩んでいるのです。
　仕事に代わるものがあれば踏ん切りがつくかもしれません。そこで、何か新しい趣味を家族と共に、などと考えるものの、これまで仕事一筋だったせいか、なかなかピンと来ない……。
　そんな方に一つ提案があります。
「明日、院長をやめるとしたら？」と自分自身に問いかけてみてください。また、家族やスタッフなど、信頼のおける方に話してみてください。その瞬間から、何をすべきか、何が必要か、浮かんでくるかもしれません。
　そんな気持ちになった方のために、一足先に自ら立ち上げた橋本会計を承継させ、引退した私の経験もふまえながら、引退準備のお話をしたくてこの本を書きました。
　それぞれの引退のかたちがあるので、すべてが参考になるとは思いませんが、少しでもお役に立てれば幸いです。特に、開業時に拙著『安心開業ハンドブック』を愛読していただいた方には、ぜひハッピーリタイアメントを実現していただきたいと願っています。

公認会計士・税理士
橋本　守

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