マトリックスの装着に煩わしさを感じている
院長にお勧めしたい1冊
脱マトリックス!
フリーハンドのII級窩洞CR充填
3D printer technique
歯科医療の分野においても、3Dプリンターはいまや欠かせない存在となっている。アライナー矯正やインプラントのサージカルガイド、スプリント、オペレーションシミュレーションなど、その応用範囲はますます広がっている。
こうした現代の基幹技術の一つである「3Dプリンター」をタイトルに冠したのが、本書である。
サブタイトルにある「3D printer technique」とは、いわばCR修復における“積層造形”の概念を取り入れた革新的手法であり、従来のマトリックスに頼ることなく、フリーハンドでⅡ級窩洞の隣接面を構築していく点に最大の特長がある。その成り立ちには、興味深いエピソードがある。
著者が顕微鏡歯科治療を始めた当時、私が開催しているCR修復ハンズオンセミナーに参加してくれたことがあった。
そこで紹介したSurface Tension ControlTechnique(表面張力を活かしたフロアブルレジンの充填方法)を臨床で行うなかで、オレンジフィルターを入れ忘れたことでレジンが徐々に硬化し、結果として失敗に終わったという体験があったという。
この“うっかり”した出来事が、本書で解説されている独自のテクニックの着想に繋がったという点に、臨床家ならではの創造性と前向きな姿勢がうかがえる。
本書では、こういった考案に至るきっかけや、著者が主催するハンズオンセミナーの内容を忠実に誌面上に再現した構成となっている。具体的には、技術の概要や使用器具の選定、操作のコツ、トラブルシューティング、さらには技術習得の練習方法などが、解説されている。
私自身、ハンズオンセミナーを受講したことがあるのだが、一連の流れが極めて論理的かつ実践的に整理されており、非常に学びの深い内容だった。
その体験を、誌上で追体験できるのが本書である。未受講の方にとっては、まさにセミナーの“予習”として、すでにセミナーを受講した方にとっては“復習”や“定着”のための優れた教材となっている。
臨床における新たな可能性を切り拓くこのテクニックは、単なる充填技術を超え、現代歯科医療のあり方そのものに一石を投じるものであると考える。
この技術はⅡ級窩洞CR修復に留まらず、CRを用いる多くの臨床場面に応用が可能であり、日常臨床に大いに役立つ。何より、日常臨床が楽しくなる点も大きな魅力である。
歯科医師ならば一読の価値がある一冊として、強くお勧めしたい。
(文・三橋 純/東京都・医療法人社団 顕歯会 デンタルみつはし)
【著・イラスト】
野亀慶訓(岡山県・野亀歯科医院)
AB判・96頁・オールカラー 定価:9,900円(本体 9,000円+税)
小社より好評発売中!
過去の書評一覧はこちら
歯科医師向け月刊誌『デンタルダイヤモンド』のTOOTH STATION掲載の”書評”をご紹介いたします。今回は、『脱マトリックス!フリーハンドのII級窩洞CR充填 3D printer technique』の書評を、三橋 純先生(東京都・医療法人社団 顕歯会 デンタルみつはし)に執筆いただきました。
是非ご一読ください。