Q&A インプラント ボーンレベルとティシュレベルのどちらを選択する?|デンタルダイヤモンド 2025年4月号

Q&A インプラント ボーンレベルとティシュレベルのどちらを選択する?|デンタルダイヤモンド 2025年4月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年4月号より「ボーンレベルとティシュレベルのどちらを選択する?」についてです。

インプラント埋入における、ボーンレベルとティシュレベルの違いやメリット・デメリットを教えてください。 愛知県・S歯科

1.2つのインプラント埋入システム
 Brånemarkインプラントに端を発する2回法インプラント(ボーンレベルインプラント:以下、BL)は、無菌的な骨治癒を導くためにインプラント体を骨内に埋入後、完全閉創する術式を推奨しました。これに対してSchroederは、埋入直後からインプラント体上面が口腔内に露出する1回法インプラント(ティシュレベルインプラント:以下、TL)であっても、経粘膜治癒が可能であることを示しました。

図❶ インプラント体埋入の方法
図❶ インプラント体埋入の方法

図❷ BL とTL における骨上縁近傍の接合部
図❷ BLとTLにおける骨上縁近傍の接合部

 これら2つのシステムは現在のインプラント治療の源流であり、変わらず臨床で頻用されています。両者の違いを比較しながら、TLのメリットとデメリットを考えてみましょう。
2.BLとTLの構造的相違点
 BLはインプラント体が骨内に埋入され、骨上縁近傍でアバットメントもしくは上部構造が連結されます。これに対し、TLでは骨内埋入部と粘膜を貫通するカラー部が一体になっており、埋入時からインプラント体上面が口腔内に露出することになります。この構造の違いが臨床的にさまざまな差異をもたらします。
3.手術回数と術創の汚染(感染)
 BLは、インプラント体埋入後に完全閉創するため、治癒期間後二次手術といわれる粘膜切開が必要になります。完全閉創することで術創の汚染を可及的に回避でき、またインプラント周囲への骨形成過程(治癒期間)の荷重を低減できます。
 一方、TLでは、手術侵襲はインプラント埋入時の1回ですが、埋入時からインプラント体の上面が口腔内に露出します。当初、術創汚染が懸念されましたが、これまでの多くの臨床経過から杞憂との結論に至っています。
 さらに、昨今では、BLでもインプラント体埋入後、ただちにヒーリングアバットメントを装着し、1回法術式とすることもあります(図1)。
 しかしながら、インプラント埋入とともに骨造成を併用する場合は、完全閉創のできるBLのほうが術創保全のために有利と考えられています。
4.骨上縁近傍の接合部(図2)
 骨内に埋入されるBLは骨上縁近傍でアバットメント/上部構造体が接合されます。この接合部に間隙を生じると、細菌叢が発生し、インプラント体辺縁骨の吸収をもたらすことが知られています。この細菌叢の影響を低減するため、水平的にオフセットを付与したプラットフォームシフティングや、テーパージョイントによりマイクロギャップを減じる構造が頻用されています。
 これに対し、TLは骨近傍に接合部がないため細菌叢を生じず、また間隙に伴う微少動揺もないため、辺縁骨は比較的安定です。
 加えて、BLは、CAD/CAMアバットメントなどによりインプラント体直上からエマージェンスプロファイルや歯頸線の任意の設定が可能で、審美的な上部構造の製作が可能です。しかしながら、過度なエマージェンスアングルや凸状のエマージェンスプロファイルは辺縁骨を惹起することが報告されており、設計には十分な検討が必要です。
 これに対し、TLは、インプラント埋入時に上部構造の辺縁が決定されるため、インプラントの三次元的位置が極めて重要になります。
 また、エマージェンスアングルとプロファイルはほぼ理想的に設定されており、アバットメント/上部構造の形態による辺縁骨への影響は少ないといえます。
 なお、TLとBLのメリット・デメリットについて表1にまとめましたので、ご参照ください。

澤瀬 隆
●長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野


デンタルダイヤモンド 2025年4月号 表紙

▽月刊デンタルダイヤモンドのバックナンバーはこちら▽
https://www.dental-diamond.co.jp/list/103

▽Q&Aのバックナンバーはこちら▽
https://dental-diamond.jp/qanda.html