Q&A その他 妊娠を機に禁煙した患者への再喫煙防止支援|デンタルダイヤモンド 2025年3月号

Q&A その他 妊娠を機に禁煙した患者への再喫煙防止支援|デンタルダイヤモンド 2025年3月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年3月号より「妊娠を機に禁煙した患者への再喫煙防止支援」についてです。

当院ではメインテナンスの際、妊活をしている女性や妊婦の喫煙者に対して禁煙支援をしています。しかし、禁煙がうまくいっても、出産後に再び喫煙を始めてしまう方が多いように感じています。そこで、再喫煙防止支援としてどのようなことができるのでしょうか。 佐賀県・H歯科

1.再喫煙防止支援が必要な理由
 妊婦の喫煙率は、平成21年は5.0%、平成25年は3.8%でしたが、令和4年では2.1%と減少しています(令和4年国民健康調査:厚生労働省)。このように、喫煙女性で妊娠された方の大半が、赤ちゃんへの悪影響を避けるため自らの意志で禁煙されます。
 一方で、出産後には育児ストレスなどから、再喫煙となる割合が半数以上にもなることが報告1)されており、禁煙した妊婦に対する再喫煙防止支援は必要不可欠といえます。
 以下にそのポイントについて解説します。
2.再喫煙防止支援の進め方
 まずは問診において、再喫煙防止支援の対象妊婦をピックアップするために、すべての妊婦に過去の喫煙歴を聴くことが必要です。また、とくにパートナーの喫煙の有無についても確認が必要です。パートナーが喫煙者で身近にタバコがある環境下では、再喫煙となる危険性が高くなるからです。妊娠をきっかけにパートナーも禁煙に関心を示す場合が多く、妊娠はまさに“禁煙のビッグチャンス”といえます。
 実際の支援内容ですが、まずは禁煙した妊婦には、赤ちゃんのために禁煙したことを最大限に褒めてあげましょう。“母親を選んで生まれてくる”かけがえのない命を授かったことの意義と喜びを、改めて認識してもらうことが大切です。
 なお、禁煙中の妊婦に対する情報提供ですが、図1にあるような妊娠中の喫煙の害や子どもへの副流煙の害、授乳中の喫煙の悪影響についてパンフレットなど2,3)を用いて具体的に説明します。ネガティブな内容でも、禁煙しているので躊躇なく伝えることができます。さらに禁煙のメリットとして、ポジティブな内容(自身への健康効果、美容効果、経済効果など)を必ず伝えるようにします。妊婦は健康に対するモチベーションが高まっているので、非常に熱心に聴いてくれることが多く、禁煙支援が楽しくなります。

図❶ 妊娠中の喫煙リスク(参考文献2)より引用改変)
図❶ 妊娠中の喫煙リスク(参考文献2)より引用改変)

表❶ 吸いたくなったときの対応策4)

3.喫煙したくなったら
 喫煙したくなったときの対応策も知っておくことが必要です。表1に具体的な対応策を列挙していますが、それらを一方的に説明するのではなく、まずは「あなたならどうしますか?」と尋ね、対応策を自分自身で考えてもらうことが大切です。また、「1本だけなら」とタバコに手を出すと、心理的依存がよみがえり、次のタバコが止められなくなってしまうため、この“1本だけオバケ”には、とくに注意することも伝えます。
 禁煙した妊婦には出産後の再受診を勧め、歯科における定期健診を利用して再喫煙防止支援を継続して行うことが重要です。たとえ再喫煙となった場合でも、「喫煙=薬物依存症(病気):悪いのはタバコであり妊産婦は一番の被害者」として、慈悲の心で粘り強く次の禁煙チャレンジを勧めることが大切です。
 妊娠期に信頼関係を築き、出産後の母子同時の定期健診に繫げることで、生涯にわたる家族の健康支援と幸せづくりに歯科として貢献することが理想的です。

【参考文献】

1) 鈴木孝太,他:母親の再喫煙にパートナーの禁煙が与える影響の検討.日本小児禁煙研究会雑誌,3(2):66-71,2013.
2) 滝川雅之(監):お口の健康と妊産婦&赤ちゃん歯科のお話.松風,京都,2024.
3) 母子衛生研究会:はじめよう禁煙Book 平成20年度版.
4) 滝川雅之:妊産婦からはじめる親子予防歯科.医療情報研究所,2023.

滝川雅之
●岡山県・三宅ハロー歯科 小児歯科・矯正歯科


デンタルダイヤモンド 2025年3月号 表紙

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