Column 呼吸と咀嚼を助ける義歯の構造|舌骨から紐解く顎機能の謎 丸茂義二のファイナルアンサー

Column|舌骨から紐解く顎機能の謎 丸茂義二のファイナルアンサー

デンタルダイヤモンド社のベストセラー書籍『舌骨から紐解く顎機能の謎 丸茂義二のファイナルアンサー』のColumnの一つを特別公開!
「呼吸と咀嚼を助ける義歯の構造」についてです。

呼吸と咀嚼を助ける義歯の構造

 表情筋の役割を義歯上(a)に示す。口輪筋の収縮は左右のモダイオラス(口角結節)を前方に移動させるように働く。モダイオラスは本来は頰筋の「停止」であるが、機能的には「起始」である。ここで重要なのは、口輪筋の収縮時には図中に黄色で示す下顎に付着した頰筋の働きである。本来頰筋は起始が歯槽骨で、表情筋が「停止」の皮筋であるが、口輪筋の活動によって下顎が前方に引かれるようなときには、頰筋の歯槽骨側が「停止」となる。この頰筋の力は非常に大きく、bに示すように口腔前庭にシリコーンのパテを入れて口輪筋の活動を高めると、上顎歯槽突起頰側の赤線の部分から口角へ強大な筋肉が走行するのがわかる。このときに下顎の頰筋は、上顎より幅が広いのと、下顎も前方位になってしまうために、シリコーンでの表現は少ない。
 cには頰筋と口角結節による表情筋の活性が高いときの口唇や、口腔内の状態を示す。口輪筋の緊張が高いときには、その圧力に拮抗するように舌が前突する。その前突力は、舌骨の上昇と前進状態を支持に、舌の圧力が増す。前歯を挟んだ前後の圧力がかかるときには、上下の歯列は接触していない。舌の側縁に圧痕がつくような状態になることが多い。舌の側縁に歯の圧痕がつくと、歯を嚙みしめているという風説があるが、実際のクレンチングでは舌は歯列から離れるので、正常者の所見であると考えてよい。
 このような口輪筋の緊張状態で下顎は前方位になるが、上顎の頰筋はモダイオラスが前進すると、上顎の歯槽骨を引くように働く。
 cの水色矢印は、前突した舌の下面が、下顎義歯の安定に繫がる働きをすることを示している。また、口輪筋よりも外にある義歯の床縁は厚みをもたせたコルベン状であり、この構造は舌が前突したり、開口するときには義歯を安定させる役割を果たす。
 口輪筋の活動が高いと、舌骨の低位を防ぎ、舌が口腔内で活動的になる。

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