- 2024年4月に改正障害者差別解消法が施行されるそうですが、どのような点が変わるのでしょうか。とくに歯科医院において注意すべきことがあれば教えてください。 新潟県・R歯科医院
-
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)においては、これまで事業者による不当な差別的取り扱いは禁止されていましたが、合理的配慮の提供は努力義務とされていました。2021(令和3)年の改正により、2024(令和6)年4月1日から事業者による合理的配慮の提供が義務化されます。
「合理的配慮」とは、日本も締結している「障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約」の2条において、「障害者が他の者との平等を基礎としてすべての人権および基本的自由を享有し、または行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失したまたは過度の負担を課さないもの」と定義されています。
合理的配慮の提供にあたっては、障害のある人と事業者等との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、ともに対応案を検討していくことが重要とされています(内閣府:令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!より)。
合理的配慮の提供に関し、本稿執筆時(2024〔令和6〕年1月現在)において、医療機関に特化したガイドライン等は作成されていません。もっとも、障害者差別解消法が施行された2016(平成28)年に厚生労働省が作成した「障害者差別解消法 医療関係事業者向けガイドライン」が存在し、ここに医療機関における「合理的配慮と考えられる例」が多数記載されていますので、いくつかご紹介します。1.基準・手順の柔軟な変更
障害の特性に応じて施設のルール、慣行を柔軟に変更すること(診察等で待つ場合、患者が待ちやすい近くの場所で待ってもらう、順番がきたら電話で呼び込むなど)。2.物理的環境への配慮
① 施設内の段差にスロープを渡すこと。
② エレベーターがない施設の上下階に移動する際、マンパワーで移動をサポートすること。3.情報提供等についての配慮や工夫
① 説明文書の点字版、拡大文字版、テキストデータ、音声データ(コード化したものを含む)の提供や必要に応じて代読・代筆を行うこと。
② 身振り、手話、要約筆記、筆談、図解、ふりがな付き文書を使用するなど、本人が希望する方法でわかりやすい説明を行うこと。
③ 文書を読み上げたり、口頭による丁寧な説明を行うこと。
④ 電子メール、ホームページ、ファックスなど多様な媒体で情報提供、予約受付、案内を行うこと。4.建物や設備についての配慮や工夫
① 色の組み合わせによる見にくさを解消するため、標示物や案内図等の配色を工夫すること。
② トイレ、病室など部屋の種類や、その方向を示す絵記号や色別の表示などを設けること。5.職員などとのコミュニケーションや情報のやりとり、サービス提供についての配慮や工夫
声がよく聞こえるように、また、口の動きや表情を読めるようにマスクを外して話をすること。●
前述のガイドラインには、このほかにも各障害特性に応じた対応についても具体例が記載されています。適宜参考にし、診療所において合理的配慮の提供を進める必要があります。
井上雅弘
●銀座誠和法律事務所
▽月刊デンタルダイヤモンドのバックナンバーはこちら▽
https://www.dental-diamond.co.jp/list/103
▽Q&Aのバックナンバーはこちら▽
https://dental-diamond.jp/qanda.html
学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2024年3月号より「障害者差別解消法はどのように改正される?」についてです。