Q&A 歯科一般 一般開業医が行える OSAのスクリーニング|デンタルダイヤモンド 2023年11月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2023年11月号より「一般開業医が行えるOSAのスクリーニング」についてです。

小児の睡眠時無呼吸症候群(OSA)について、一般開業医でもできるスクリーニングを教えてください。また、その結果、OSAの疑いがある患児を見つけた場合、どのように対応すればよいでしょうか。 青森県・W歯科

小児OSAのスクリーニングは歯科医師の重要な役割です。しかし、その前に小児OSAの罹患率を把握しておく必要があります。具体的には健常小児で2〜5%と報告されていますが、歯列不正がある場合はその頻度は高くなります。
 また、あまり知られていませんが、ダウン症児では50%、口唇口蓋裂児では30%、そして、その他顎顔面歯列形態に異常を認める小児も高頻度に罹患しています。さらに、脳性麻痺など筋機能に問題がある小児でも、頻度が高いことを念頭にスクリーニングするとよいでしょう。
 実際のスクリーニングですが、問診でいびきの有無を確認し、いびきが頻繁にあるようでしたら、最も一般的なOSA-18 という質問票(表1)で合計が60点を超える場合、OSAを疑います。しかし、この方法は感度、特異度ともにそれほど高くなく、総合的な判断が必要となるため、そこで筆者は表2のような所見が2つ以上ある場合にOSAを疑います。
 その後の対応ですが、筆者が研究留学した睡眠研究の中心のスタンフォード大学では、まず耳鼻科医の診察・診断があり、その後に顎骨や歯列の問題がある場合に、歯科医師が医師と相談して歯科的治療方針を検討していました。つまり、診断・治療はあくまで医師が中心になります。
 しかし、最近では小児の睡眠、口呼吸、機能などのキーワードをもとに、歯科では幾多の研究会、学会が乱立し、決して標準治療とはいえないエビデンス(学会ガイドラインや査読付き英語論文に基づくデータ)のない民間療法的治療がインターネットなどで広く発信されています。
 ですので、OSAを疑う小児が来院した場合、歯科医師は日本医学会が認定した睡眠関連学会の日本睡眠学会の睡眠専門医でかつ、小児睡眠呼吸障害を専門とする耳鼻科医か小児科医に紹介するのが最善でしょう。同じ専門医でも成人と小児はまったく異なるので、その点は確認する必要があります。
 それでも、睡眠専門医師がどうしても見つからない場合は、大学病院の耳鼻咽喉科に紹介するとよいでしょう。ご参考までに、歯科では日本歯科医学会が認めた睡眠に関係する唯一の認定分科会として、日本睡眠歯科学会があります。

表❶ OSA-18日本語版(参考文献1)より引用改変)
表❶ OSA-18日本語版(参考文献1)より引用改変)

表❷ 睡眠呼吸障害のスクリーニングとしての所見(2つ以上でOSAを疑う)
表❷ 睡眠呼吸障害のスクリーニングとしての所見(2つ以上でOSAを疑う)

【参考文献】

北村剛一,他:小児の睡眠時無呼吸症候群におけるOSA-18日本語版の有用性の検討.口腔・咽頭科,27(2):127-133,2014.

岩崎智憲
●徳島大学大学院医歯薬学研究部
小児歯科学分野

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