Dd診断力てすと『原因不明の鼻血と上唇の傷』デンタルダイヤモンド 2017年7月号

加納欣德 Yoshinori KANOH
あいち小児保健医療総合センター 歯科口腔外科
〒474-8710 愛知県大府市森岡町7-426

図❶ 初診時の上唇周囲



患者:5歳、男児
主訴:原因不明の鼻血と上唇の傷
既往歴:アトピー性皮膚炎、食物アレルギー
現病歴:母親より得た情報として、保育園に行く前に、かかりつけの歯科医院を受診し、局所麻酔下で左側上顎乳臼歯のう蝕治療を受けた。治療中も治療後もとくに異常はなく、男児は歯科医院からそのまま保育園に登園した。夕方、男児が保育園より帰宅すると、鼻血と口唇の傷が認められ、翌日当科を受診した。
現症:左鼻孔に鼻出血の跡を思わせる血餅、左上唇の腫脹と擦過傷の跡が認められた(図❶)。粘膜側には、歯が接触したことによって生じたと思われる損傷も認められた。に仮封材を認めたが、歯冠破折や歯肉膿瘍など、口腔内に異常所見は認めなかった。その他、頭部顔面や手足に異常所見はなく、全身状態も良好であった。
男児に発達障害はないが、保育園で転倒や鼻をいじったかなどについて尋ねるも、「わからない、知らない」との返答であった。心配している母親とは対照的に、診察中の男児の表情は穏やかであった。

Q 最も疑われる疾患名は?

① 転倒などによる外傷
虐待による外傷
③ 局所麻酔による合併症

出血性素因