超音波スケーラーの使用目的やメリット、禁忌例を徹底解説!

超音波スケーラーは1955年に、Zinner、Johnson、Wilsonらが超音波を利用したスケーリングを行って以来、現在ではハンドスケーラーとともに歯石除去用器材として広く使用されています。

本記事では、書籍『よくわかる超音波スケーラーのきほん』より抜粋して、超音波スケーラーの使用目的について詳しく解説します。

超音波スケーラーとは

超音波スケーラーは超音波 (25,000~40,000Hz)の振動と注水で歯石を粉砕・除去するものです。

歯面に多量の歯石沈着がある場合にはハンドスケーラーよりも効率よく除去でき、かつ術者の手指への負担も少ないのが特徴です。

また、注水下で使用するため、プラークの洗浄効果を期待できます。ただし、使用にあたってはエアロゾルの発生に注意が必要です。

超音波スケーラーを使用するメリット

超音波スケーラーを使用するおもなメリットは、以下の7つです。

  • 歯石除去
  • プラーク除去
  • 根分岐部への到達性
  • セメント質の保存
  • 歯周ポケットへの挿入
  • イリゲーション(洗浄)
  • 殺菌効果

1.歯石除去

歯石除去を容易に行え、ハンドスケーラーより術者の疲労が少なく済みます。

2.プラーク除去

ディプラーキング(歯根面や歯周ポケット内の歯肉縁下バイオフィルムの破壊または除去)に効果が期待できます。

3.根分岐部への到達性

(白水貿易のチップ)

適切なチップを選択することで、根分岐部へのアクセスが可能です。

4.セメント質の保存

パワーはP モード、E モード、S モードと目的に合わせて切り替えができ、1〜10段階の細かいパワー調整ができます。

パワーを調整できるので、歯根面やセメント質に及ぼす損傷が少ないのが特徴です。

5.歯周ポケットへの挿入

細径のチップを選択すれば、深い歯周ポケットへも挿入しやすいのがメリットです。

6.イリゲーション(洗浄)

超音波スケーラーの注水によるイリゲーション(歯周ポケット内洗浄)は、内毒素や浮遊性細菌、施術部位の出血を流し出し、視野を確保できます

7.殺菌効果

超音波スケーラーのチップの振動によって発生する注水の流れ、すなわちキャビテーション効果とアコースティックマイクロストリーミング効果(後述)で細菌の細胞壁が破壊され、 チップが到達しない少し先にあるバイオフィルムも破壊できます。

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超音波スケーラーの効果

ここでは超音波スケーラーの効果について確認していきましょう。

1.キャビテーション効果

振動するチップが水と接触して数千の小さな真空気泡を作り、これが大きくなって弾けます。

この現象が瞬時に数万回繰り返され、気泡が弾ける際に生じる強い力が歯と組織面に衝突します。

これらの気泡によって発生する振動波が細菌の細胞壁を引き裂き、細菌を破壊します。

2.アコースティックマイクロストリーミング効果

振動するインスツルメントチップによって生じた持続的な水流が、閉鎖空間である歯周ポケット内で起こる渦巻のことを、アコースティックマイクロストリーミング効果と呼びます。

この激しい渦巻の流れによって、バイオフィルム(プラーク)を破壊します。

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超音波スケーラーとハンドスケーラーの比較

ここでは超音波スケーラーとハンドスケーラーを比較しましたが、どちらが優れているか示したものではありません。

それぞれの特徴を理解して、状況に応じて併用するのが望ましいでしょう。

超音波スケーリングの禁忌例

超音波スケーラーはすべての人に使用できるわけではありません。ここでは、どのような人に適用を避けるべきなのかを解説します。

1.伝染性疾患

肝炎や結核、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性などの伝染性疾患を有する患者は、飛沫感染拡散のおそれがあるため、適用を避けなければなりません。

2.易感染性宿主

汚染された歯科用ユニットの水やエアロゾルによる日和見感染への高い感受性をもつ、放置された糖尿病や臓器移植、慢性の内科的疾患または免疫反応を抑制されている患者には使用しないようにします。

3.呼吸器系疾患

肺の中に感染性物質や細菌を吸引した場合、感染症のハイリスクとなるため、肺気腫や喘息といった呼吸器系疾患の既往歴がある患者には適用しないようにします。

4.ペースメーカー

米国歯周病学会では、心臓ペースメーカー装着患者には、磁歪式 (マグネット式))超音波スケーラーの使用を避けるように勧告しています。

一方、ピエゾ式超音波スケーラーは、ペースメーカーの機能に障害を与えないとされていますが、スプラソン P-MAX2は禁忌です。詳細は各メーカーへお問い合わせください。

5.嚥下障害や開口困難

嚥下障害や開口困難が起こりやすいため、 多発性硬化症や筋萎縮症、筋ジストロフィー、麻痺を伴う患者への使用は禁忌です。

6.若年者

超音波スケーラーの振動や発熱から損傷を受けやすい大きな歯髄腔を有する乳歯や萌出間もない永久歯保持者には使用してはなりません

7.その他

インプラント専用チップ(インプラントプロテクト:白水貿易)

象牙質知覚過敏部位やポーセレンクラウン、コンポジットレジン修復、脱灰エナメル質面、露出した象牙質などと超音波スケーラーのチップが接触しないようにします。

また、チタン製インプラントには専用チップを使用しましょう。

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マグネット式とピエゾ式の違いと特徴

マグネット式の超音波スケーラーは、1957年にドイツのデンツプライ社が開発しました。

一方、ピエゾ式の超音波スケーラーは、1979年にフランスのサテレック社によって開発されました。

現在販売されている超音波スケーラーはピエゾ式が多く、マグネット式はキャビトロン ® (デンツプライシロナ) のみになりました。

マグネット式のハンドピースは、チップの取り付け方もピエゾ式とは異なり、チップにニッケルチタン製の棒がついているため、ピエゾ式と比べてハンドピース部が長くなっています。(表2参照)

まとめ

超音波スケーラーには様々な種類があり、非常に高い治療効果が期待できます。

適応や禁忌などを踏まえて、患者様一人ひとりや状況に合わせて適切なものを使用するようにしましょう。

(デンタルダイヤモンド社)

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