Q&A 経営 スタッフの退職を防ぐために心がけること|デンタルダイヤモンド 2024年12月号

Q&A 経営 スタッフの退職を防ぐために心がけること|デンタルダイヤモンド 2024年12月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2024年12月号より「スタッフの退職を防ぐために心がけること」についてです。

スタッフには長期にわたり勤務してほしいのですが、当院では数ヵ月から長くても半年程度で退職するスタッフが大半です。スタッフに長く勤めてもらう秘訣や、医院で行える対策など、ポイントを教えてください。 栃木県・T歯科クリニック

 スタッフが退職をする理由としては、人間関係、給与、仕事内容などが挙げられます。人材採用や育成などを行う企業による意識調査や厚生労働省が行う雇用動向調査の内容をみても、職場での人間関係や給与などの待遇面、あるいは労働環境や仕事の内容などを退職の理由とする割合が比較的高くなっているようです。
 人材の不足により、歯科医院での勤務を希望するスタッフには歯科医院の仕事が未経験での応募も多くみられますし、経験者であっても歯科医院それぞれで仕組みや考え方が異なりますので、職場に適応するために時間がかかることがあります。
 早期の退職を未然に防ぐために心がけることとして、面接の際に医院情報を正確に伝えておくなど入職前の対応と、入職後の対応が考えられます。

1.入職前の対応
 面接などの機会によって入職前に対応が可能なものとしては、給与面や仕事内容についての説明方法が該当します。給与などの労務面に関しては、給与体系の説明や残業、有給休暇などの取り組み方といった医院の労務方針を詳細に説明することで、入職後に起こる認識違いを未然に防げます。職務手当や精皆勤手当、役職手当など、いくつかの手当を使いながら給与体系を組み立てている場合は、それぞれの手当がつく条件についても説明が必要です。
 どのようなときに手当がもらえるかがわかることは、スタッフにとっても頑張ろうと思えるモチベーションに繫がりますから、手当を設定する際においても根拠を明確に示してください。
 仕事内容についても同様に、面接時に丁寧な説明を行うことで、担当する業務内容の理解を深められます。対面の面接だけではなく、一緒に働くスタッフとともに院内の様子を見学することや、一定時間を診療室内で見学してもらうことも入職後の働き方をイメージしやすくなります。
 採用後は2ヵ月程度の研修期間を設定し、実際の業務に対応してもらいながら、今後続けられそうな職場であるか、仕事内容は希望していたものと相違はないかなど、長期的に勤務可能かという視点でみてもらうことが必要です。その間は、急な退職もやむを得ないことを伝えるようにします。

2.入職後の対応
 面接や見学、研修期間を経て、担当する業務を担ってもらうわけですが、最終的に重要な要素となるのは、院内の人間関係に尽きるでしょう。もっとも影響を与えるのは、トレーニングや指導を担う先輩スタッフとの関係づくりです。新人スタッフの指導を担う勤務歴になると、院内のルールや考え方にも精通しているため、ある程度言いたいことをはっきりと伝えるスタッフが多くなり、新人からすると怖い存在に映ったり、冷たい印象を与えたりするなど、新人を委縮させてしまうことがあります。
 指導するスタッフは、責任感をもって指導にあたるため、無意識のうちに厳しい言葉や言い方になってしまいます。したがって、院長がフォローできる態勢を心がける必要があります。
 人間関係の善し悪しが今後の勤務にも影響があるとはいえ、関係づくりが新人スタッフの顔色を窺う、あるいは気を遣うことだと認識してしまわないように、指導するスタッフには院長のスタッフ教育に対する考え方をそのつど示すことが大切です。スタッフの採用活動時点から、長く勤められる取り組みを心がけてください。

門田 亮
●デンタル・マネジメント・コンサルティング


デンタルダイヤモンド 2024年12月号 表紙

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