Q&A 税務 税負担が軽減される賃上げ促進税制|デンタルダイヤモンド 2024年11月号

Q&A 税務 税負担が軽減される賃上げ促進税制|デンタルダイヤモンド 2024年11月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2024年11月号より「税負担が軽減される賃上げ促進税制」についてです。

スタッフの定着・募集のために給与を引き上げようと考えています。給与を引き上げると税金が安くなると聞きましたが、具体的にどのような制度か、教えてください。 神奈川県・M歯科

 物価上昇を上回る賃上げ促進を実現するため、賃上げ促進税制が改正されました。
 ご質問のようにスタッフの定着、新規採用の募集に際して、賃金の引き上げが必要となっていますので、その賃上げ促進を税制面で後押しをする必要から賃上げ促進税制の改正が行われました。

1.賃上げ促進税制の概要
 賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等(個人事業主および医療法人)が、一定の要件を満たしたうえで前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を個人事業主は所得税(医療法人は法人税)から税額控除できる制度です。
 賃上げ促進税制は、従来からあった所得拡大促進税制が令和4年度税制改正で旧称が改められたものです。基本的な内容は所得拡大促進税制を踏襲しつつも、適用要件などの見直しが行われ、制度自体はより簡素化されたものとなりました。

2.賃上げ促進税制の内容
 中小企業者等で青色申告書を提出するものが、国内雇用者(注1)に対して給与等(注2)を支給する場合において、一定の要件を満たす場合には、その雇用者給与等支給増加額の15%(上乗せ要件を満たす場合は最大40%)の税額控除(所得税額または法人税額の20%限度)を適用できます。
1)適用要件(通常要件)
雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加⇒控除率15%
2)適用要件(上乗せ要件)
雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加⇒控除率15%
3)教育訓練費
 前年度と比べて10%以上増加⇒控除率10%
•注1:国内雇用者とは
 個人事業主または医療法人の使用人のうちその個人事業主または医療法人の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、個人事業主の特殊関係者、使用人兼務役員を含む役員および役員の特関係者は含まれません。
 なお、特殊関係者とは、個人事業主または医療法人の役員の親族などを指します。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までが該当します。また、個人事業主または当該役員と婚姻関係と同様の事情にある者、個人事業主または当該役員から生計の支援を受けている者等も特殊関係者に含まれます。
•注2:給与等とは
 俸給・給料・賃金・歳費および賞与ならびにこれらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与等)をいいます。したがって、たとえば、所得税法第9条(非課税所得)の規定により非課税とされる給与所得者に対する通勤手当等についても、原則的には本制度における「給与等」に含まれることになります。ただし、賃金台帳に記載された支給額のみを対象に、所得税法上課税されない通勤手当等の額を含めずに計算するなど、合理的な方法により継続して国内雇用者に対する給与等の支給額を計算することも認められます。
 なお、退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に含まれません。
 また、雇用安定助成金(国または地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金、その他、これらに類するもの)の支払いを受けている場合には、その雇用安定助成金は、雇用者給与等支給額から控除しなければなりません。

3.適用期間
 令和4年4月1日~令和6年3月31日に開始する各事業年度(個人事業主は令和5年および令和6年の各年が対象)。
 なお、令和6年度の税制改正で令和9年3月31日開始事業年度(個人事業主は令和7年、令和8年および令和9年の各年が対象)まで延長されました。

今村 正
●税理士法人 千代田タックスパートナーズ


デンタルダイヤモンド 2024年11月号 表紙

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