2021年06月号 「壊死組織を伴う潰瘍」
成相義樹 Yoshiki NARIAI
松江市立病院 歯科口腔外科 〒690-8509 島根県松江市乃白町32-1
図1 部歯肉から口腔前庭部の潰瘍
図2 造影CT(Axial像)
患者: | 75歳、女性 |
初診: | 2019年9月 |
主訴: | 右側上顎歯肉部の接触痛 |
現病歴: | 2019年6月、部ビスフォスフォネート(BP)関連顎骨壊死にて当科を受診した。すでにBP製剤は中止されており、抜歯術、腐骨除去術を施行した。術後経過良好にて転院となったが、右側上顎前歯部口腔前庭に潰瘍を生じたため、再度紹介され受診した。 |
既往歴: | 関節リウマチ。右人工膝関節置換術および腰椎圧迫骨折後、骨粗鬆症。 |
薬歴: | メトトレキサート(MTX)2mg 3C/週、セレコキシブ錠100mg 2T/日、プレドニゾロン錠5mg 1T/日、レバミピド錠100mg 2T/日、ブシラミン錠100mg 2T/日、バゼドキシフェン錠20mg 1T/日、エルデカルシトールカプセル0.75μg 1C/日。 |
現症: | |
全身所見; | 円背であり、両手指に変形がみられた。 |
口腔内所見; | 右側上顎前歯部歯肉から口腔前庭部に、内部に壊死組織を伴う潰瘍がみられた。潰瘍周囲の硬結はわずかであった(図1)。 |
画像所見; | 造影CTにて右側上顎前歯部の歯槽骨唇側は欠損し、上顎前歯部口腔前庭部に、内部にエアーを伴う軟部濃度と辺縁の濃染がみられる(図2)。 |
血液検査所見; | WBC 7,500/μL、CRP 0.61 mg/dL、LDH 219IU/L、可溶性IL-2 受容体794 U/mLでCRP、可溶性IL-2受容体が高値であった。EBV VCA-IgG 5.4(+)、EBV VCA-IgM 0.8(+-)、 EBV EBNA 4.0(+)であり、EBウイルス(EBV)既感染と考えられた。 |
Q | 最も疑われる疾患名は? |
1.歯肉がん | |
2.顎骨壊死 | |
3.義歯性潰瘍 | |
4.EBV陽性リンパ増殖性疾患 |