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2021年06月号 「壊死組織を伴う潰瘍」
4.EBV陽性リンパ増殖性疾患

 MTXの投与に伴う免疫抑制状態下ではさまざまなリンパ増殖性疾患を生じ、MTX関連リンパ増殖性疾患と呼ばれている。本疾患はしばしばEBV陽性であり、EBV陽性リンパ増殖性疾患(EBV-positive lymphoproliferative disorder:EBV-LPD)でもある。EBV-LPDのうち、とくに皮膚、粘膜に限局して発症し、潰瘍性病変を呈するものはEBV陽性粘膜皮膚潰瘍(EBV-positive mucocutaneous ulcer:EBVMCU)と呼ばれ、2017年にWHOで新たな疾患として分類されている。
 EBVMCUは一般的に孤立性であり、口腔、咽頭、皮膚、上部消化管に生じるが、口腔粘膜が最も多いとされている。そのうちの多くは、医原性の免疫抑制状態や加齢、稀に潜在的な免疫抑制状態から生じると推測されている。病理組織学的には、古典的ホジキンリンパ腫やEBV陽性び漫性大細胞型B細胞リンパ腫との鑑別を要し、免疫組織化学染色や臨床像から総合的に判断する必要がある。
 EBVMCUの多くは免疫抑制薬の休薬や減量によって寛解する予後良好な疾患であるため、他のEBV-LPDとの鑑別が重要であるが、再発やリンパ腫への進展例も報告されているため、慎重な経過観察が必要である。
処置および経過:右側上顎前歯部悪性腫瘍を疑い、生検を施行した。
病理組織学的所見:潰瘍直下に、核形不正で明瞭な核小体を有する大型異型リンパ球のび漫性浸潤、増殖がみられる。増殖リンパ球の間には既存の唾液腺組織が残存している。増殖する異型リンパ球は、CD3-、CD4-、CD5-、CD8-、CD20+、CD79a+、CD56-、TdT-、EBER-1+であり、EBVMCUなどのEBV-LPDが疑われる(図3〜5)。
 MTXの投与歴からEBVMCUの可能性を考え、処方医に対診のうえ、MTXを休薬したところ潰瘍は徐々に縮小し、6週間で消失した。
最終診断:右側上顎前歯部EBVMCU

図3 H-E染色。大型異型リンパ球のび漫性浸潤、増殖がみられる。増殖リンパ球の間には、既存の唾液腺組織が残存している(×200)
図3 H-E染色。大型異型リンパ球のび漫性浸潤、増殖がみられる。増殖リンパ球の間に は、既存の唾液腺組織が残存している(×200)
図4 免疫組織化学染色。異型リンパ球はCD20陽性を示す(×200)
図4 免疫組織化学染色。異型リンパ球はCD20陽性を示す(×200)
図5 免疫組織化学染色。異型リンパ球はEBER-1陽性を示す(×200)
図5 免疫組織化学染色。異型リンパ球はEBER-1陽性を示す(×200)

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