2020年2月号 「上顎前歯の脱落、その先に待つもの」
黒柳範雄 Norio KUROYANAGI
碧南市民病院 歯科口腔外科 口腔ケアセンター 〒447-8502 愛知県碧南市平和町３–６
図1 初診時の口腔内写真。上顎唇側歯肉から腐骨が露出し、排膿が認められる
図2 初診から約１年の口腔内写真。上顎歯槽骨の全体が壊死し、露出した状態。上顎唇側歯肉は退縮し、口蓋歯肉は捲り上がっている
図3 上顎脱落時の口腔内写真。脱落した上顎および３DCT画像
図4 上顎脱落後３ヵ月の口腔内写真。骨露出部に上皮化が進んでいる
図5 上顎脱落後９ヵ月の口腔内写真。翼口蓋窩に骨の露出と排膿を認める
| 患者： | 67歳、男性 |
| 主訴： | 上顎前歯の脱落 |
| 既往歴： | 前立腺がん |
| 現病歴： | 前立腺がんの多発骨転移を認めたため、ゾレドロネートが開始された。約２年後には上顎前歯に動揺が生じ、脱落した。上顎骨の露出を指摘され、当科に紹介受診となった。 |
| 現症： | |
| 全身状態； | 体格中等度、栄養状態良好。口腔内所見；の骨露出を認める（図１）。上顎に残存する歯も２度の動揺あり。 |
| 口腔内所見； |  の骨露出を認める（図１）。上顎に残存する歯も２度の動揺あり。 |
| 診断： | 上顎骨吸収抑制薬関連顎骨壊死 |
| 処置および経過； | ゾレドロネート休薬後、定期的な歯科衛生指導ならびに歯周治療と壊死骨部の洗浄、適宜抗菌薬の投与を行った。上顎歯牙はすべて喪失し、歯槽骨全体が露出するに至った（図２）。その半年後に自宅で上顎骨が脱落した（図３）。上顎骨の脱落後、いったんは上皮化を認めたが（図４）、その６ヵ月後に翼口蓋窩から排膿を認めた（図５）。 |
| 臨床検査所見： | 体温37.1℃、白血球数11,000/μL、CRP8.86㎎/dL。 |
| Ｑ | 最も疑われる疾患名は？ |
| １．蝶形骨の骨吸収抑制薬関連骨壊死 | |
| ２．上顎洞炎 | |
| ３．頬骨弓骨折 | |
| ４．上顎歯肉がん |
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