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2020年2月号 「上顎前歯の脱落、その先に待つもの」
1.蝶形骨の骨吸収抑制薬関連骨壊死

 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死は、骨粗鬆症やがんなどの骨転移、多発性骨髄腫などの治療において臨床効果が高いとされる骨修復薬に起因する疾患である。最近では医療関係者の周知活動もあって、万人の知るところとなっているが、本症例のように顎骨壊死が頭蓋底へ進展したことは稀である。しかし、乳がんや前立腺がんなどの比較的緩やかに経過するがんの場合では、顎骨壊死が拡大し、脳膿瘍を発症することが報告されている。
 重症度別に治療法が分けられ、初期では原因薬剤の中止や感染巣の洗浄および抗菌薬投与といった保存的治療、重症例では顎骨の切除が必要とされる。定期的な口腔内診査と口腔清掃の徹底が顎骨壊死発症のリスクを減少させ、骨ヒト遺伝子組み換え型パラトルモンが顎骨壊死の治療に有効との報告もあり、期待されている。医師と歯科医師が協力して、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死に対する診断・治療の質を高めていくことが重要で、本症例の報告がさらなる啓発となれば幸いである。
蝶形骨の骨吸収抑制薬関連骨壊死後の処置および経過:骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の診断後、ゾレドロネートの休薬を継続したが、前立腺がんの進行は落ちついていた。しかし、上顎骨脱落の9ヵ月後に、右側上顎結節相当部後方の翼口蓋窩より排膿を認めた。その直後に、側頭部の激しい腫脹のため救急外来を受診し、蝶形骨に骨吸収抑制薬関連顎骨壊死と腐骨が進展し、側頭窩膿瘍、眼窩内膿瘍を形成した(図6)。積極的な感染巣の洗浄や抗菌薬投与を行うも、急性炎症を繰り返し起こし、上顎骨脱落よりおよそ1年後のCTでは、蝶形骨の後半に骨吸収抑制薬関連顎骨壊死が拡大し(図7)、脳膿瘍を危惧した矢先に永眠された。





図6 上顎骨脱落後9ヵ月のCT画像。矢印:側頭窩膿瘍、眼科内膿瘍






図7 上顎骨脱落後約1年のCT画像。矢印:蝶形骨、頭蓋底の骨壊死
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