2019年12月号 「頬粘膜の腫瘤性病変」
野村城二 Joji NOMURA
伊勢赤十字病院 歯科口腔外科 〒516-8512 三重県伊勢市船江1-471-2
a:右側頬粘膜
b:左側頬粘膜
a:パノラマX線写真
b:頭部PA X線写真
図1 初診時の口腔内写真
図2 初診時のX線写真
患者: | 77歳、男性 |
初診: | 2017年5月 |
主訴: | 両側頬粘膜の違和感 |
既往歴: | 2015年IgD型多発性骨髄腫、胃食道逆流症、2016年帯状疱疹 |
家族歴: | 特記事項なし |
現病歴: | 血液内科での骨髄腫に対する治療(多剤化学療法)に伴い、2015年12月より定期的な口腔管理を行っていたが、とくに異常はみられなかった。その後、一時治療が中断していたが、2017年5月下旬、両側頬粘膜の違和感を自覚し、再初診となった。 |
現症: | |
全身所見: | 全身倦怠感、上下肢の痺れ、視力、聴力障害とSpO2低下を認めたが、摂食・嚥下障害はなかった。 |
口腔内所見; | 両側頬粘膜咬合線上に大小不同の小結節状、暗赤色の腫瘤性病変を多数認めたが、自発痛、圧痛、刺激による疼痛などはなかった(図1)。その他、舌を含め口腔内に異常はみられなかった。 |
画像所見: | 歯牙、顎骨などに異常はなく、頭部PA X線写真でもあきらかなパンチアウト像は認められなかった(図2)。 |
血液検査所見: | 正球性貧血と、IgD-λ型Mタンパクの出現がみられた。また、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス抗体価は正常範囲内であった。 |
細菌培養検査所見: | α溶血性連鎖球菌、カンジダが検出された。 |
Q | 最も疑われる疾患名は? |
1.抗がん剤による粘膜炎 | |
2.血管腫 | |
3.多発性骨髄腫に合併したアミロイドーシス | |
4.ウイルス性口内炎 |