A | 3.多発性骨髄腫に合併したアミロイドーシス |
アミロイドーシスは、不溶性タンパクであるアミロイドが全身臓器に沈着し、腎不全、心不全、神経障害などの機能障害を来す疾患で、顎顔面領域では舌の腫脹および硬結、嚥下困難などが多く報告されている。また、多発性骨髄腫にアミロイドーシスが合併する場合があることはよく知られており、その合併頻度は5〜20%、舌アミロイドーシスの合併頻度は10%程度と報告されている。
自験例では初診時、舌には異常なく、頬粘膜にのみ病変がみられた。生検を勧めたが、とくに症状がなく、また、全身倦怠感と本人の強い拒否により経過観察となった。定期的に観察を行っていたが、病変の範囲は徐々に拡大、初診より2ヵ月後には、著しい接触痛と、右側舌縁部にも同様の病変の出現を認めたため(図3)、生検の必要性を再度説明し、右側頬粘膜部より生検を施行した。
病理組織学的所見:HE染色像では、角化上皮下に抗酸性無構造沈着病変を認め、また、 Congo-Red 染色像で沈着物は橙色に染色されたためアミロイドーシスと診断された(図4)。生検後は病変のわずかな拡大を認めたが、舌、頬粘膜の運動障害もなく経過していた。しかし、初診より3ヵ月後多発性骨髄腫の悪化により、死亡された。
前述のように、多発性骨髄腫に伴う口腔内アミロイドーシスは舌に最も多くみられるが、口唇、歯肉、口腔底や自験例のような頬粘膜での発生例も少数ながら報告されている。一般に、口腔内も含めたアミロイドーシスを合併した多発性骨髄腫は、合併しない骨髄腫と比べ、予後は極めて悪いとされている。また、口腔内アミロイドーシスの診断後、多発性骨髄腫が判明する例も報告されていることから、生検などによりアミロイドーシスと診断された際には、多発性骨髄腫の有無を確認するとともに、アミロイドーシスを合併した多発性骨髄腫は極めて予後不良であることを念頭に、病変の治療を行うことが肝要である。
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